すでにご存知のことだと思いますが、「解雇」は簡単にはできません。
また、解雇が「無効」だとされた場合のリスクは大きく、解雇した日以降の賃金を支払う必要があります。つまり、解雇をして、解雇無効の判決が1年後に出たとしたら1年分の賃金を支払うことになるわけです。
そのため、「解雇」に踏み切る前に「退職勧奨」をするケースが多いわけですが、「退職勧奨」する際には、押さえておかなければならないポイントがいくつかあります。 以下に整理しておきます。
① 執拗で、繰り返し行われる半強制的な退職の勧めは違法となる。
② 性別による差別など法令に反する退職勧奨は違法となる。
③ 退職勧奨の域を超える退職強要(侮蔑的な表現、懲戒処分をちらつかせる)は違法となる。
④ 原則として、退職の勧めを拒否した者に対する不利益な措置(経営上の必要がない配置転換、懲戒処分、不昇給など)は違法となる。
以上のように、「退職勧奨であれば(解雇といわなければ)問題ない!」というわけではありませんので、注意が必要です。
なお、ある国民的人気グループのメンバーが、ある容疑で書類送検され、結果的には不起訴処分(起訴猶予)となりましたが、CMや番組の降板などで世間を騒がせました。
結局、本人が事務所に退職願を提出し、それが受理されてグループ脱退&事務所を退職となったわけですが、これが一般的な会社員であれば即時解雇でしょう。
書類送検されたというだけでは微妙ですが、関係者に与えた不利益を考えると、「労働者の責めに帰すべき事由に基づく解雇」が認められるでしょう(法令のルール上は、労基署の認定が必要)。
認められた場合は、30日前の予告も、解雇予告手当も不要で、即時解雇が可能です。
こんなケースは稀かもしれませんが、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められるのであれば、解雇も可能です(もちろん、就業規則の規定も重要です)。
仮に、このようなケースが起こったとすれば、解雇にするか、温情で退職勧奨をして辞職や合意退職などの扱いにしてあげるかの選択になりますね。
会社によってさまざまでしょうが、やめさせ方によって、退職金などに影響する場合もありますから、その点にも注意して、慎重な判断が必要といえそうです。
※この回答・解説は平成30年5月10日時点のものになります。