中小企業こそインターンシップ制度を取り入れるべき!?そのメリットと注意点
<ひろたの杜 労務オフィス 代表 山口善広/PSR会員>
コロナ禍後、業績の回復に伴って、多くの企業からは人手不足の声が聞かれるようになりました。
就職活動も本格化しており、人材の争奪戦はますます激しくなっております。
その打開策として大手企業がインターンシップ制度を導入したことで、学生の注目を集めているため、優秀な人材が大手企業にすべて取られてしまうのでは、と危機感を募らせている中小企業も多いかも知れません。
しかし、インターンシップ制度は決して大手企業の専売特許ではなく、逆に中小企業こそインターンシップ制度を導入して学生にアピールする絶好の機会だと考えます。
そうは言っても、インターンシップ制度を導入するのは難しいのでは、と躊躇してしまうかも知れません。
今回は、インターンシップ制度のメリットと注意点についてお話しさせていただき、是非とも前向きに検討いただければと思います。
そもそも「インターンシップ制度」とは
インターンシップ制度は、企業での実習や研修を通して学生に就業とはどういうものかをを経験してもらうものです。
ですので、本来の採用活動とは一線を画す制度となっています。
とは言っても、自社のことを知ってもらい、その業務の一端を経験してもらうことで、将来的に自社の採用活動にエントリーしてくれればインターンシップ制度を取り入れるメリットは十分ありそうです。
では、制度のメリットについてもう少し深堀りしてみることにしましょう。
インターンシップ制度が企業にもたらすメリットとは
新卒で入社した社員が、3年以内に離職する割合が3割であることはご存知のことと思います。
初めて勤務した会社を退職した理由は、第1位は「労働時間や休日、休暇の条件が良くなかった(30.3%)」ですが、「仕事が自分に合わない」ことが理由で退職した人が20.1%もいるのです。(平成30年若年者雇用実態調査の概況)
つまり、入社したものの「こんなはずじゃなかった」という理由で離職する人が5人に1人いることになるのです。
しかし、インターンシップにおいて事前に学生に業務内容を知ってもらい、自社に魅力を感じてもらうことができれば、ミスマッチを起こす可能性を抑えることができ、離職率を下げることが期待できます。
また、学生と直に触れ合うことで、学生が何を思い、どんなことをしたいと思っているのか、といったデータを蓄積することで、採用選考時の評価材料に応用することもできます。
さて、インターンシップを導入するにしても、どれくらいの期間で設定するべきなのかが気になるところです。
もちろん、1ヶ月以上とすることも可能ですが、長期間になればなるほど企業側の負担が大きくなります。
本来の業務を遂行しながら学生を受け入れるわけですから、長ければいいというわけでもありません。
実際、インターンシップの期間を1日だけとしている企業もありますし、2日から2週間程度としているところもあります。
どれだけの期間にするかは、来てもらったインターンシップ生に何をしてもらうのかにも影響するので、インターンシップの内容を決めてから実施する日数を決めても良いかも知れません。
ただ、インターンシップ生に業務の一端を経験してもらうということは、注意すべき点があることも事実です。
では、どのようなことに気をつけるべきなのかについてお話しましょう。
インターンシップ生を受け入れる時の注意点とは
まず、気をつけなければならないことは、経験してもらう業務の内容によっては、インターンシップ生ではなく「労働者」として判断される可能性があるということです。
たとえば、見学や体験的な内容に乏しく、企業の指揮命令を受けて生産活動に従事しているような場合です。
その際、労働時間に見合った賃金を支払うことになりますし、賃金を支払う場合は、最低賃金以上の金額となるようにする必要があります。
また、万が一、事故が起きてケガをした場合は、労災保険で補償をすることになりますので、あくまでも「就業体験」であることを心がけるようにしましょう。
いかがでしょうか。
注意すべき点はあるにしても、学生に自社の存在を知ってもらい、就業体験を通じて業務内容を把握してもらうことができれば、学生の就職活動に影響を与えることができ、優秀な人材の確保にもつながるのではないでしょうか。
とは言っても、「就業体験」と「労働」の区別をしにくく不安であるという場合は、労務管理のプロであるお近くの社会保険労務士にご相談されることをお勧めします。
プロフィール
ひろたの杜 労務オフィス 代表(https://yoshismile.com/)
営業や購買、総務などの業務を会社員として経験したのち、社会保険労務士の資格を取る。いくつかの社会保険労務士事務所に勤務したのち独立開業する。現在は、労働者や事業主からの労働相談を受けつつ、社労士試験の受験生の支援をしている。