<社会保険労務士法人出口事務所 代表社員 出口裕美/PSR会員>
コロナ禍により、「採用面接」や「働き方」が大きく変化し、今までの面接対策やインターンシップとは状況が異なってきました。
そして、コロナ禍により、採用される社員達に求められる個人特性や能力も大きく変化したのではないでしょうか。「23年卒の新卒採用」について考えてみたいと思います。
コロナ禍での面接対策
これまでは、求職者は企業を訪問し、対面で採用面接を受けるのが一般的でしたが、新型コロナウイルス感染症の対策を機に、Web会議ツールでの面接が普及しました。自宅から企業の採用面接に参加することが可能となりましたので、遠方から応募した場合でも容易にオンライン面接に参加できるようになりました。
企業のメリットとしては、遠方の求職者との面接もしやすいこと、全国の採用業務を本社で一括して行うことも可能になることがあげられます。また、求職者のメリットとしては、移動時間や交通費等の節約になること、遠方でも多くの企業の面接に参加できること、移動が困難な方も面接に参加しやすいことがあげられます。
一方、企業のデメリットとしては、Web会議ツール等の準備が必要になること、対面に比べて通信状況等によっては面接の印象などが異なる場合があることなどがあげられます。また、求職者のデメリットとしては、企業の雰囲気や社員の様子を見ることができないこと、オンライン面接に必要な知識も必要となること、全国の求職者の面接が可能になることで、一定の人に採用内定が集中する可能性があることがあげられます。
よって、企業は内定辞退される可能性が高くなることが予想されますので注意が必要です。その他にもオンライン面接への対応可否を採用基準としたり、対応できないことをもって、不利益な取扱いを行わないように注意が必要です。
また、採用基準となる個人特性や能力も変化しています。
テレワークになると自らオンライン上でやりとりする力がないとコミュニケーションが取れなくなってしまう可能性があります。その他、自己管理スキルが求められます。会社以外の場所で集中力を維持することや私生活とのオンオフの切り替えをする能力も必要になるでしょう。
コロナ禍でのインターンシップ(就業体験)
新型コロナウイルス感染症はインターンシップにも影響を及ぼしています。まずは、インターンシップを開催する企業は減少傾向にあり、また、開催されたとしても、企業を訪問するインターンシップからオンラインでのインターンシップへと変化したり、期間が短縮されたりしてきました。
さらにオンラインでの開催により、全国からインターンシップに参加することも可能になりましたので、インターンシップに参加できるのは選抜された一部の学生となりました。
また、移動時間や交通費等の節約になることで、一人で複数のインターンシップにも参加しやすくなったという傾向もあるようです。
また、インターンシップを開催する企業にとっては、以下のような新型コロナウイルスに関するリスクもあります。
・インターンシップの期間中にインターン生が新型コロナウイルスに感染していた、または感染したことにより、インターンシップを開催する企業が会場の設備および施設等を消毒する、営業を停止するなど企業に損害を与える恐れがあること
・インターンシップに参加するのに伴い大学が学生を被保険者として加入させる「学生補償制度」について、新型コロナウイルス感染症は傷害補償の対象外であること、およびインターン生が新型コロナウイルスに感染していた、または感染したことにより、企業に与えた損害は賠償責任補償の対象外であること
こういった環境の中でオンラインでのインターンシップの開催が増えてくるのはやむを得ないと思いますが、インターンシップは企業にとってもインターン生にとっても、「インターンシップ経験者は未経験者より入社後3年間の退職率が低くなる」効果がありますので、ぜひ、活用いただければと思います。
参考資料:経済産業省産業人材政策室「学生・企業の接続における長期インターンシップが与える効果についての検討会調査報告」 P115
プロフィール
社会保険労務士法人出口事務所(https://www.deguchi-office.com/)代表社員
特定社会保険労務士 出口 裕美