会社の支払う「入社支度金」に係る税務

公開日:2020年11月30日

 新型コロナウイルスで経営に大きな打撃を受けている会社が多い中、一部には積極的な採用に動いている会社もあります。 優秀な人材を採用するための応募の促進や入社に伴う転居費用を会社が負担するなどの理由から、 入社支度金を支給する場合があります。本稿では、入社支度金に関する税務上の取扱いについてみていきます。

■ 入社時に一律で支給される入社支度金

 入社にあたり支度金を無条件で一律に支給する会社もあります。このケースでは、従業員に引っ越しの必要があるかどうかには関係なく、すべての従業員に一律支給されます。一律に支給される入社支度金は、「雇用契約」を前提とした支払いであり、「労務の対価」としての性質を有しているものと考えられます。一律支給される入社支度金は、その支給時期により次のとおりに扱われます。

1. 入社前に支給される場合
支給時期が労務の提供が行われる前となるため、雑所得として取り扱われます。
そのため、100万円以下の部分については10.21%、100万円を超える部分については20.42%の源泉徴収をする必要があります。
2. 入社後に支給される場合
入社後は労務の提供が行われているため、賞与として給与所得に該当する可能性が高いと言えます。最終 の判断は所轄税務署へ相談して行うことをおすすめします。

■ 転居等が必要となるケースで支給される入社支度金

 入社にあたり転居等が必要となる場合、会社が従業員へ支給する転居費用として通常必要と認められる部分の金額は、所得税法上では非課税とされます。そのため、所得税の源泉徴収も不要となります。
 また、会社の経理処理では、旅費交通費として処理されるケースが多いようです。
なお、社内規則により、転居による移動距離などを考慮して支度金額を決定するようにし、支給額と実費弁済相当額が同額程度となるようにします。

■ 入社支度金と消費税

 消費税の取り扱いは次のとおりです。

1. 入社時に一律で支給される入社支度金
「通常必要とされる部分の金額」とはいえず、実費弁済の性質を持たないため、課税仕入れとして扱われません。
2. 転居等が必要となるケースで支給される入社支度金
実費相当額の支払いと同等となるため、課税仕入れとして扱われることになります。
3. 他社の従業員を引き抜くための「引抜料」
対価性を有するものと認められるため、課税仕入れとして扱われることになります。

 

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