1.「留学」から就労できる在留資格への変更
日本の大学を卒業される方は、在学期間中において「留学」という在留資格を保持しています。このままでは日本で就労して報酬を受けることはできませんので、在留資格を変更しなければなりません。そこで問題となるのは次の3つの点が明確であるかどうかです。
ア 大学での専攻・学部と仕事内容に関連性があるのか
イ 雇用側企業がなぜその人材を必要としているのか
ウ 雇用した結果、企業と本人にどのようなメリットがあるのか
上記のアについては、文学部卒の学生を営業に配置することはできませんが、経済学部卒業なら営業の内容によっては認められるようになってきました。また、人文科学系の勉強をした学生でも、仕事内容によってはIT企業に就職することが可能になってきました。このように最近の傾向として、専攻・学部と仕事の関係を厳格に考えすぎないようにしようということで入国管理局が基準の運用を緩和しているようです。次にイとウについては、アを補足する位置づけとして考えれば良いでしょう。企業規模にもよりますが、規模が小さくなるほどイとウについての説明を十分にする必要があると思われます。
外国人採用においては、大学での専攻・学部と仕事内容のマッチングが最も重要です。
2.在留資格の変更手続
例えば「留学」から「人文科学・国際業務」への変更の場合、大学の卒業を証する書面を申請書に添付しなければなりません。ところが最近では卒業学部の名称が、一見して何を勉強する学部なのかよくわからないケースが増えています。採用時点で卒業証明書と成績証明書などの履修科目を確認できるものをもらっておきたいところです。
卒業証明書だけでなく、履修科目を確認しましょう。
外国人留学生の採用を検討する企業は年々増えています。もはや外国人は企業の人材採用にとって見過ごすことのできない人材資源チャネルです。今後はグローバリゼーションの波とともに、国際競争力を高める必要から優秀な外国人を採用したいというニーズが高まるでしょう。特に日本の大学に留学している学生の中には、言葉の壁もなく、日本人とは違った感性をもつ優秀な人材が多くおられます。しかし彼らの目には、日本の企業が外国人に対して昇進の機会や平等な評価を与えない、魅力に乏しい職場と映っているようです。結果として、これらの優秀な人材が海外のグローバル企業へ流出して行きます。そこで日本の企業が門戸を開放し、日本人社員とイコール・オポチュニティー(機会平等)を提供すれば、彼らは必ずや大きな戦力となり、調達システム、製品開発、販売チャネルを革新させ、新たな利益機会を得ることにつながるでしょう。
<社会保険労務士・行政書士 PSR正会員 橘 直己 >