厚生労働省から、令和5年9月21日に開催された「第7回 社会保障審議会年金部会」の資料が公表されました。
今回の議事は、「第3号被保険者制度について」と「女性の就労の制約と指摘される制度等について(いわゆる「年収の壁」等)」。
政府は当面の措置として、短時間労働者への被用者保険の適用拡大による従業員の手取り減少分を穴埋めした企業を支援する制度を令和5年10月にも始める方針ですが、この部会で議論されるのは、その後の抜本的な制度の見直しの内容です。
厚生労働省でも年収の壁等に関する具体的な議論が始まったということで、報道などでも話題になっています。
同省は、いわゆる「106万円の壁」への対応策として、新たに保険料負担が生じるパート従業員らの手取りが減らないように本人負担分の保険料を減免する案を示していますが、大半の委員から、その案を疑問視する意見(不公平感が強すぎるなど)があがっているということです。
ここでは、今回提出された資料に示されている「年収の壁」等への対応策の基本的な考え方を紹介しておきます。
●いわゆる「106万円の壁」への対応策の考え方
○いわゆる「106万円の壁」では、保険料負担が増えるが厚生年金給付も増える。これは全ての厚生年金被保険者に共通であり、適用拡大に伴う短時間労働者のみ異なる取扱いとなるわけではない。
○他方で、給付のことは考えず、「壁」を境にした保険料負担による手取り収入の減少のみに着目すれば「壁」を感じる者が存在することから、これへの対応は「保険料負担による手取り収入の減少をどうするか」を出発点として考えることが基本となる。
なお、現在の適用要件の下においては、最低賃金の引上げ等により、適用時点で「106万円」を意識しない水準まで収入が増加していればいわゆる「年収の壁」は解消される。
●いわゆる「130万円の壁」への対応策の考え方
○いわゆる「130万円の壁」では、保険料負担が増えても基礎年金給付は同じであり、これは第1号被保険者と第3号被保険者とで負担と給付の構造が異なることによるもの。
○したがって、これへの対応は、第3号被保険者のあり方そのものに着目した何らかの見直しを行うか、「壁」を感じながら働く第3号被保険者が少なくなるよう、短時間労働者への被用者保険の適用拡大を一層加速化することが基本となる。
詳しくは、こちらをご覧ください。
<第7回 社会保障審議会年金部会/資料>
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/nenkin_230921.html