変形労働時間制では、一週40時間、1日8時間の法定労働時間を超えて労働時間を定めることが可能となります。しかし、変形労働時間制の期間を平均して、週の所定労働時間が法定労働時間(40時間)を超えないことが必要です。あらかじめ各日、各週の労働時間を決めることによって、変形する期間内の繁忙な週について40時間、繁忙な日について8時間を超えることができます。
1.1カ月単位での時間外労働の計算
①~③の順で計算し、その結果を合計します。
①1日について計算
1日の所定労働時間が8時間を超える日は所定労働時間を超えた時間、所定労働時間が8時間以下の場合は8時間を超えた時間を計算します。
②1週間について計算
所定労働時間が40時間を超える週はその週の所定労働時間を超えた時間(①で計算した時間を除く)、週所定労働時間が40時間未満の場合には、週40時間を超えた時間(①で計算した時間を除く)を計算します。
③変形期間について計算
変形期間については、週40時間を変形期間の日数に換算した労働時間[ 例えば、1箇月の場合、30日の月は171時間25分(40時間×30日/7日)、31日の月は177時間8分(40時間×31日/7日) ]を超えた時間(① 、② で計算した時間を除く)を計算します。
2.1年単位での時間外労働の計算
①1日及び1週間について計算
1カ月単位の変形労働時間制の場合と同様に計算します。
②変形期間について計算
変形期間については、週40時間を変形期間の日数に換算した労働時間[ 例えば、1年の場合2,085時間42分(365日の場合)、6カ月の場合1,045時間42分(183日の場合) ]を超える時間(①で計算した時間を除く)を計算します。
そして、これらを合算したものが時間外労働となります。恒常的な時間外労働はないことを前提にした制度です。
・変形労働時間制でも週の労働時間は平均すると40時間以内です。
・業務の都合により、任意に労働時間を変更するものは変形労働時間制に該当しません。
・1年単位の変形労働時間制は労使協定の締結が必要です。
今までの裁判例では
業務の都合により4週ないし1箇月を通じ、1週平均38時間以内の範囲内で就業させる旨、就業規則に定めている。 → 就業規則等により各週、各日の所定労働時間の特定が必要とし原審を破棄。 (大星ヒル管理事件 最高裁 平成14.2.28判決)
1年単位の変形労働時間制は労使協定の締結が必要です。一方、1箇月単位の変形労働時間制は、労使協定によるか、就業規則に1箇月単位の変形労働時間制を採用する旨を定めて行います。さらに各週・各日の労働時間が特定されていると認められるよう、日程表等の内容や作成時期等を定めることも必要です。 〈PSR正会員 川田 陽一〉