通勤災害でよく発生する事例は、電車通勤の際に、駅構内の階段などで転倒し、怪我を負ってしまう事故です。このような災害が起きた場合は、業務災害の申請手続きと同じように、会社は、社員が診療を受けた病院(労災の指定病院)に、通勤災害用の書類である「療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3)」を提出します。しかし、通勤災害の書類(様式第16号の3)には、業務災害の書類(様式第5号)と違い、通勤経路や時間を細かく記載する欄があります。例えば、電車通勤の場合、自宅から最寄り駅までの交通手段や時間、最寄り駅から次の乗換駅までの所要時間と乗車線名などの会社に到達するまでの全てを記載する必要があります。
業務災害の場合と同じように、通勤災害も怪我の治療が長引くなどして4日以上休業すると、休業給付が支給されます。通勤災害の休業給付の書類は「休業給付支給請求書~(様式第16号の6)」で、治療を受けている病院に「診療担当者の証明」の欄を記入してもらいます。記入してもらったら、初回のみ「平均賃金算定内訳」の別紙を添付して、会社管轄の労働基準監督署へ提出します。
社員が通勤災害として会社に申請をしてきた際に、それが本当に通勤災害となるのかしっかり把握する必要があります。特に帰宅途中は、寄り道をする人が多いので、その通勤災害が、逸脱・中断に該当してしまっていないかなど、慎重に確認する必要があります。 また、平成18年の法改正により、単身赴任者が単身赴任先から家族の住む帰省先へ帰る際の事故や複数就業者がアルバイト先へ向かう際の事故なども通勤災害として救済されることになり、通勤災害の範囲は徐々に拡大傾向にあります。会社は、このような法改正について、知らなかったでは済まされませんので、法改正などの動向に注意を払いつつ、いつでも適切な処理ができる状態にしておきましょう。 〈社会保険労務士 PSR正会員 村松 鋭士〉