会社員が青色申告で自宅開業する場合の家事費のポイント
- 公開日:2023年3月31日.
副業を認める会社が増加していることも影響してか青色申告にて開業される会社員の方が増えています。自宅を事務所として開業する場合、正しい事業利益を計算するためには、事務所の維持管理にあたって生じる費用を事業上の経費と家事費(普段の生活で生じる生活費)に区分する必要があります。
本稿では、自宅を事務所として使用する場合に、家賃や水道光熱費などのように家事(生活)と業務(事業)の両方にかかわる費用(「家事関連費」という)を事業経費と家事費とに区分するポイントを中心に見ていきます。
■家賃の取り扱い
1.一部屋全部を事務所として使用
毎月の支払家賃を事務所使用分と家事使用分に、それぞれの面積割合に応じて案分します。このうち、事務所使用分への案分額が支払家賃として事業経費となります。
例)月額家賃 15万円、全体面積 72㎡、事務所(事業)使用分 12㎡
経費となる家賃(月額)2万5千円(15万円×12/72㎡)
2.部屋の一部を事務所として使用
リビングなど部屋の一部を使って仕事をしている場合は、仕事として使用している部分(面積)を確定するため、簡易で構わないのでパーティションなどを利用して、「業務として利用している部分を明確に区切る」ことをお勧めします。理由は、青色申告者の家事関連費について必要経費にできるのは、「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額」とされているからです。
■電気料金の取り扱い
電気料金はコンセントを管理することで案分が簡単にできます。仕事専用に使うコンセントを決めることです。例えば家にあるコンセント口が全部で12個あれば、そのうちの2個が事務所専用であれば電気料金の2/12が経費となります。
なお、同居人の居ない独り住まいであれば、一日の電気使用時間が17時間で仕事をする時間が9時間であれば、9/17を必要経費にすることもできます。
■水道・ガス料金の取り扱い
会社員の方が自宅を事務所として使用した場合、全体の水道使用量のうち、業務で使用した量を計算するための合理的な根拠を見つけることは困難と言えます。あくまでも私見ですが、打ち合わせ等でいれるコーヒーやトイレの利用などを考慮しても、全体消費量の5%にも届かないのではないでしょうか。私設の「子メーター」を設置して消費量を測定するなどの方法もありますが、事務所でのわずかな消費量のためにそこまで手間をかけても得られるメリットは少なく割に合わないと感じます。
なお、ガスの使用については業務に必須とは言えないことも多く、合理的な方法による経費額の計算は水道料金同様に難しいです。
執筆者
税理士 田中利征
税理士、経営財務コンサルタント/田中税務会計事務所長/企業家サポートセンター 代表/戸田市経営アドバイザー