経営方針に参画する等の経営者と一体的な立場にない、従業員に対し管理的立場にない、出退勤について規制を受け自由裁量権を有さない等労基法41条2号の管理監督者に該当しない場合には、時間外・休日労働に対し、割増賃金を支払わなければなりません。
ところで、一般的には管理職に対して、管理職手当等の名目で、職務に対する手当が支払われていることが多くあります。管理職手当等のように定額で支払われた手当を割増賃金とみるられるでしょうか。この場合、労基法の基準に基づいて計算された額と同等以上の額が支払われていれば、可能です。ただし、そのためには、管理職手当のうち割増賃金に相当する部分がそれ以外の部分と区分でき、また、割増賃金に相当する部分の金額と労基法の基準に基づいて計算された金額を比較できることが必要です。 しかし、このように定額で支払うこととしている場合でも、労基法の基準に基づいて計算された金額を下回る場合には、その差額を支払わなければなりません。また、労働協約、就業規則その他によって所定賃金に時間外労働に対する割増賃金も含めて定めている場合も同様に、別途割増賃金を支給しなくとも違法ではありません。
今までの判例
例1 割増賃金を定額で支払うことは違法か →労基法の基準に基づいて計算された金額に相当する金額が支払われていれば違法ではない。(関西ソニー販売事件 大阪地裁 昭和63.10.26判決)
例2 歩合給に時間外、深夜労働の割増賃金を組み込んでいる →通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分を判別できないとした。 (高知県観光事件 最高裁小 平成6.6.13)
・管理職は、労基法41条2号の管理監督者と同じではありません。
・深夜業の割増賃金は、労基法上の管理監督者でも割増賃金を支払う必要があるため、当然管理職については支払わなければなりません。
管理職が、労基法41条2号の管理監督者に該当するのか、よく検討する必要があります。また、割増賃金に代え管理職手当等を支給している場合は、就業規則等にその旨を定めておく必要があります。 〈PSR正会員 川田 陽一〉