<寿限無経営コンサルティング 代表 福田 惠一/PSR会員>
「労働契約法」と聞くと読んで字の如く「労働契約」について何か定めているのだろうなとは推測できますが、なんとなく影の薄い法律だなあという感じがします。
しかし、この「労働契約法」は、今や「労働基準法」、「労働組合法」と並んで「新・労働三法」の一つとも言える法律なのです。「労働関係調整法」を入れて「労働三法」だとの反論が出ることと思います。確かに、一昔前は「重厚長大」産業が中心で、企業内の組合等が使用者と対峙することで、労使対等を実現しようとしてきました。ですから、このような集団的な労使関係を公正に調整して、労働争議を予防しすみやかに解決するためには「労働関係調整法」が重要だったわけです。
しかし、その後産業構造は急速に「軽薄短小」にシフトし、同時に組合の組織率も大きく落込みました(1949年50.8%が2022年16.5%に 厚生労働省「労働組合基礎調査」)。結果的に、集団的労働関係から個別的労働関係に重点が移ったのです。
では、個別の労働契約を民法の契約自由の原則のもとにおけばどうなるでしょうか。使用者と労働者の経済力の差は歴然としています。使用者から「嫌なら働いてくれなくていいよ」と言われれば、労働者はその主張を下げざるを得ません。労働基準法や最低賃金法と共に労働者を保護することによって、そんな経済的格差がある労使間に実質的な対等性を確保しょうとするのが「労働契約法」なのです。