第1~7回のコラムでは「リスキリング」を中心に解説させていただきました。
さて、「リスキリングをすると、従業員エンゲージメントが上がる」という話を聞いたことはないでしょうか。
「これまでの記事の解説で、リスキリングの意味はわかったが…」
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「エンゲージメントって何?」と、あらためて疑問に思われた方も少なくないと思います。
そこで第8回目では、「エンゲージメント」についてご説明いたします。
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<過去記事はこちら>
第1回「最近ニュースでよく目にするワードの「人的資本経営」って?」
第4回 リスキリングとともによく出てくるワードの「DX」とは?
第5回 「DX人材」の育成について:人材確保・育成に向けた対応策
第6回 DX人材の育成:専門実践教育訓練を受けている(リスキリングしている)従業員に対して企業ができるサポートとは
第7回 教育訓練休暇等を付与した際に受けられる人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース)
■「エンゲージメント」とは
人的資本経営を実践していく上でよく出てくるワードの「エンゲージメント」。冒頭のとおり、「リスキリングをすると、従業員エンゲージメントが上がる」「社内コミュニケーションの強化を図ったり、社内表彰制度を行ったりすると従業員エンゲージメントを向上させることができる」などと言われたりします。
エンゲージメントを英語にすると「engagement」。「婚約、約束、契約、雇用、(活動などへの積極的な)関与」などの意味を持つ英単語です。ビジネスの分野では、“深いつながりを持った関係性”を示し、
・職場と従業員の関係性については「従業員エンゲージメント」
・自社と顧客との関係性については「顧客エンゲージメント」
といいます。
■「従業員エンゲージメント」を具体的に言うと
今回のコラムでは「従業員エンゲージメント」に絞って解説させていただきます。
「従業員エンゲージメント」とは、企業が目指す姿や方向性を従業員が理解・共感し、その達成に向けて自発的に貢献しようという意識を持っていることを指します。従業員の自社や仕事に対する情熱や献身を示す自発的な意欲・度合いであることから、従業員エンゲージメントを向上させることで、組織に対するコミットメントや業績向上につながる(※)と言われています。
(※)民間企業と大学による国内企業を対象にした調査では、従業員エンゲージメントスコアと営業利益率、労働生産性の間に相関関係があることが確認されています。
出典:持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書~ 人材版伊藤レポート ~(P43)
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kigyo_kachi_kojo/pdf/20200930_1.pdf
■「従業員満足度」と「従業員エンゲージメント」の違い
似たような言葉に「従業員満足度」がありますが、こちらは所属する組織、職場の状況、上司、自身の仕事などについて、従業員が“自分の物差し”で評価をすることを意味します。
対して、「従業員エンゲージメント」は“会社が目指す方向性や姿を物差し”として、それらについての自分自身の理解度、共感度、そして行動意欲を評価するということになります。企業と従業員との間でのしっかりした信頼関係や絆を深めながら、共に成長できるような関係性です。
参考:持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書~ 人材版伊藤レポート ~(P.14)
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kigyo_kachi_kojo/pdf/20200930_1.pdf
ポイントとしては、「従業員エンゲージメント」は単に会社への帰属意識・愛社精神といった精神的な話ではない点です。企業が従業員の能力を最大限発揮できるように、社内研修・教育プログラムの充実、社内表彰制度の導入、社内コミュニケーションの強化、多様な働き方の推進など良好な職場環境を創る。それに応える形で従業員が会社の成長に貢献できるよう意欲的に仕事に取り組む。こういった“双方向”の深いつながりや結びつきがあった上で実際の行動が伴っている点が大きな違いと言えるでしょう。