パート・アルバイトから正社員へ切り替えとなった場合、年次有給休暇はどのように付与したら良いですか?

公開日:2012年2月13日
Q.パート・アルバイトから正社員へ切り替えとなった場合、年次有給休暇はどのように付与したら良いですか?
A.パート・アルバイト労働者の年次有給休暇は、比例付与(詳細は後述)という形で正社員と比較すると少ない日数が付与されます。では、パートから正社員へ身分の切り替えが行われた場合、年次有給休暇の付与日数はどのように考えれば良いかということですが、出勤率算定期間中にパートであった、あるいは正社員であったということは関係なく、付与をする日(基準日時点)現在での身分によって付与する日数が決まります。つまり判断基準は、基準日時点での所定労働日数になります。以下で詳しく見ていくことにしましょう。

 

解説

1.パート・アルバイト労働者の定義とは 労働基準法の世界では、「所定労働日数」「所定労働時間」に応じて身分判断がされます。パート・アルバイトといった名称で勤務する労働者であっても、週の所定労働日数(時間)の実態が正社員と変わらないような場合、正社員と同じ年次有給休暇を付与しなければいけません。なぜなら、パート・アルバイト労働者の年次有給休暇については、正社員の1週間の所定労働日数又は1週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して付与する旨が労働基準法上(第39条3項)に規定されているからです。つまりここでは、一定範囲内の所定労働日数で働く労働者をパート・アルバイト労働者として取扱い比例付与することとされており、名称の如何は問いません。では「一定の範囲内」についてですが、次の(1)(2)の範囲をパート・アルバイト労働者として比例付与の対象とすることとしています。

比例付与の対象者
(1)1週間の所定労働時間が30時間未満 + 1週間の所定労働日数が4日以下
  又は
(2)1週間の所定労働時間が30時間未満 + 1年間の所定労働日数が216日以下 (労働基準法 第39条・労働基準法施行規則 第24条の3)
 
 
2.比例付与 パート・アルバイト労働者の年次有給休暇は、正社員に付与する日数をベースとして考え、これに比例する形で付与されることから「比例付与」と一般的に呼ばれています。具体的には、次の計算式により日数を算出し付与します。
 
 通常労働者の有給休暇の日数×比例付与対象者の週所定労働日数/5.2日  ※小数点以下は切捨て
 
【比例付与される年次有給休暇日数】
nennkyu hireifuyo

 

 3.パート・アルバイトから正社員への切り替え では具体的にパート・アルバイト労働者から正社員へ切替わった場合、どのような処理となるかを見ていきましょう。 通達において、年次有給休暇の付与日数は、基準日の所定労働日数により決定されるものとされています(S63.3.14 基発150号)。つまり、基準日(付与日)の所定労働日数の長短により、通常の有給休暇の日数が付与されるのか、比例付与の有給休暇の日数が付与されるのか判断され、道がわかれることになります。

コンサルタントからのアドバイス

パート・アルバイトから正社員へ登用する傾向が増えています。それ故に年次有給休暇の付与に関する設問のようなケースは、どの企業も遭遇する問題であると思われます。一見すると複雑に感じられますが、実は非常にシンプルです。パート・アルバイトから正社員、またその逆の場合も、すべては付与日において、どのような所定労働日数で勤務しているかで付与日数が決定します。これを機会に、パート・アルバイト労働者に付与している有給休暇が適正であるか再度確認してみると良いでしょう。 < 社会保険労務士 佐藤正欣 >

「労働時間・休日の法律」関連記事

「労務コンプライアンス」に関するおすすめコンテンツ

ピックアップセミナー

オンライン 2024/11/27(水) /13:30~17:30

【オンライン】はじめての給与計算と社会保険の基礎セミナー

講師 : 社労士事務所Partner 所長 西本 佳子 氏

受講者累計5,000人超!2009年から実施している実務解説シリーズの人気セミナーです!
給与計算と社会保険について基礎からの解説と演習を組み合わせることで、初めての方でもすぐに実務に活用できるスキルが習得できます。

DVD・教育ツール

価格
31,900円(税込)

経験豊富な講師陣が、初心者に分かりやすく説明する、2024年版の年末調整のしかた実践セミナーDVDです。
はじめての方も、ベテランの方も、当セミナーで年末調整のポイントを演習を交えながら学習して12月の年末調整の頃には、重要な戦力に!

価格
6,600円(税込)

法律で求められることとなった介護に関する周知事項を網羅するとともに、個々人が最適な仕事と介護の両立体制をつくる上で必要な一通りの知識をまとめたのが本冊子です。
ぜひ、本冊子を介護制度の周知義務化対応としてだけでなく、介護離職防止策や介護両立支援策の一環としてご活用ください。

おすすめコンテンツ

TEST

CLOSE