○専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法(平成26年法律第137号)
有期の業務に就く高度専門的知識を有する有期雇用労働者及び定年後に有期契約で継続雇用される高齢者について、労働契約法に基づく無期転換ルールの特例を設けることとされました。〔一部を除き、平成27年4月1日から施行〕
1 目的(第1条関係)
この法律は、専門的知識等を有する有期雇用労働者等の能力の維持向上及び活用を図ることが当該専門的知識等を有する有期雇用労働者等の能力の有効な発揮及び活力ある社会の実現のために重要であることに鑑み、専門的知識等を有する有期雇用労働者がその有する能力を維持向上することができるようにするなど有期雇用労働者の特性に応じた雇用管理に関する特別の措置を講じ、併せて労働契約法の特例を定め、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とすることとされました。
〔解説〕有期の業務に就く高度専門的知識を有する有期雇用労働者及び定年後に有期契約で継続雇用される高齢者について、労働契約法に基づく無期転換申込権発生までの期間に関する特例(無期転換ルール*の特例)を設けるために、この法律が制定されました。
*同一の労働者との間で有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた場合は、労働者の申込により、無期労働契約に転換できる(労働契約法第18条)。
2 定義(第2条関係)
(1) この法律において「専門的知識等」とは、専門的な知識、技術又は経験であって、高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当するものをいうこととされました。
(2) この法律において「有期雇用労働者」とは、事業主と期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)を締結している労働者をいうこととされました。
(3) この法律において「特定有期雇用労働者」とは、次の①又は②のいずれかに該当する有期雇用労働者をいうこととされました。
① 専門的知識等を有する有期雇用労働者(事業主との間で締結された有期労働契約の契約期間に当該事業主から支払われると見込まれる賃金の額を1年間当たりの賃金の額に換算した額が厚生労働省令で定める額以上である者に限る。)であって、当該専門的知識等を必要とする業務(5年を超える一定の期間内に完了することが予定されているものに限る。以下「特定有期業務」という。)に就くもの(②に掲げる有期雇用労働者に該当するものを除く。)
② 定年(60歳以上のものに限る。以下同じ。)に達した後引き続いて当該事業主(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第9条第2項に規定する特殊関係事業主にその定年後に引き続いて雇用される場合にあっては、当該特殊関係事業主。以下同じ。)に雇用される有期雇用労働者
3 基本指針(第3条関係)
厚生労働大臣は、事業主が行う特定有期雇用労働者の特性に応じた雇用管理に関する措置に関する基本的な指針(以下「基本指針」という。)を定めなければならないこととされました。
4 第一種計画の認定(第4条関係)
(1) 事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業主が行う第一種特定有期雇用労働者(特定有期雇用労働者のうち2の(3)の①に掲げる者をいう。)の特性に応じた雇用管理に関する措置についての計画(以下「第一種計画」という。)を作成し、これを厚生労働大臣に提出して、その第一種計画が適当である旨の認定を受けることができることとされました。
(2) 厚生労働大臣は、(1)の認定の申請があった場合において、その第一種計画が所定の要件のいずれにも適合するものであると認めるときは、その認定をすることとされました。
5 第一種計画の変更等(第5条関係)
(1) 4の(1)の認定に係る事業主(以下「第一種認定事業主」という。)は、4の(1)の認定に係る第一種計画を変更しようとするときは、厚生労働大臣の認定を受けなければならないこととされました。
(2) 厚生労働大臣は、4の(1)の認定に係る第一種計画((1)による変更の認定があったときは、その変更後のもの。以下「第一種認定計画」という。)が所定の要件のいずれかに適合しなくなったと認めるときは、その認定を取り消すことができることとされました。
6 第二種計画の認定(第6条関係)
(1) 事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業主が行う第二種特定有期雇用労働者(特定有期雇用労働者のうち2の(3)の②に掲げる者をいう。)の特性に応じた雇用管理に関する措置についての計画(以下「第二種計画」という。)を作成し、これを厚生労働大臣に提出して、その第二種計画が適当である旨の認定を受けることができることとされました。
(2) 厚生労働大臣は、(1)の認定の申請があった場合において、その第二種計画が所定の要件のいずれにも適合するものであると認めるときは、その認定をすることとされました。
7 第二種計画の変更等(第7条関係)
(1) 6の(1)の認定に係る事業主(以下「第二種認定事業主」という。)は、6の(1)の認定に係る第二種計画を変更しようとするときは、厚生労働大臣の認定を受けなければならないこととされました。
(2) 厚生労働大臣は、6の(1)の認定に係る第二種計画((1)による変更の認定があったときは、その変更後のもの。以下「第二種認定計画」という。)が所定の要件のいずれかに適合しなくなったと認めるときは、その認定を取り消すことができることとされました。
8 労働契約法の特例(第8条関係)
(1) 第一種認定事業主と当該第一種認定事業主が雇用する計画対象第一種特定有期雇用労働者との間の有期労働契約に係る労働契約法第18条第1項の規定の適用については、同項中「5年」とあるのは、「第一種認定計画に記載された特定有期業務の開始の日から完了の日までの期間(当該期間が10年を超える場合にあっては、10年)」とすることとされました。
(2) 第二種認定事業主と当該第二種認定事業主が雇用する計画対象第二種特定有期雇用労働者との間の有期労働契約に係る労働契約法第18条第1項の規定の適用については、定年後引き続いて当該第二種認定事業主に雇用されている期間は、同項に規定する通算契約期間に算入しないこととされました。
〔解説〕労働契約法の特例(無期転換ルールの特例)の概要は次のとおり。
1.特例の対象者
(1) 「5年を超える一定の期間内に完了することが予定されている業務」に就く高度専門的知識等を有する有期雇用労働者
(2) 定年後に有期契約で継続雇用される高齢者
2.特例の効果
特例の対象者について、労働契約法に基づく無期転換申込権発生までの期間(5年)を延長
→次の期間は、無期転換申込権が発生しないこととする。
・1.(1)の者:一定の期間内に完了することが予定されている業務に就く期間(上限:10年)
・1.(2)の者:定年後引き続き雇用されている期間
<イメージ図(厚生労働省資料)>
9 援助(第9条関係)
国は、第一種認定計画に係る計画対象第一種特定有期雇用労働者の特性に応じた雇用管理に関する措置を講ずる第一種認定事業主に対して、必要な助成その他の援助を行うよう努めることとされました。
10 指導及び助言(第10条関係)
厚生労働大臣は、第一種認定事業主又は第二種認定事業主に対し、第一種認定計画又は第二種認定計画に係る措置の的確な実施に必要な指導及び助言を行うこととされました。
11 報告の徴収(第11条関係)
厚生労働大臣は、第一種認定事業主又は第二種認定事業主に対し、第一種認定計画又は第二種認定計画に記載された事項の実施状況について報告を求めることができることとされました。
12 適用除外(第12条関係)
(1) この法律は、国家公務員、地方公務員及び船員については、適用しないこととされました。
(2) この法律は、同居の親族のみを使用する事業については、適用しないこととされました。
13 権限の委任(第13条関係)
この法律に定める厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができ、都道府県労働局長に委任された権限は、厚生労働省令で定めるところにより、労働基準監督署長に委任することができることとされました。
14 厚生労働省令への委任(第14条関係)
この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、厚生労働省令で定めることとされました。
15 附則
(1) 施行前の準備(附則第2条関係)
① 厚生労働大臣は、この法律の施行前においても、基本指針を定めることができることとされました。
② 厚生労働大臣は、①により基本指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならないこととされました。
(2) 経過措置(附則第3条ほか関係)
① 特定有期雇用労働者であって施行日前に労働契約法第18条第1項に規定する通算契約期間が5年を超えることになった者に係る同項に規定する期間の定めのない労働契約の締結の申込みについては、なお従前の例によることとされました。
② この附則に規定するもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置は、政令で定めることとされました。
この法律は、一部の規定を除き、平成27年4月1日から施行されます。