〇労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律(平成27年法律第73号)
1 特定労働者派遣事業の廃止
一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業の区別を廃止し、労働者派遣事業を全て許可制とすることとされました(第2条、第2章第2節関係)。
2 労働者派遣事業の許可の基準
労働者派遣事業の許可の基準として、申請者が当該事業の派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして厚生労働省令で定める基準に適合するものであることを追加することとされました(第7条第1項関係)。
3 運用上の配慮
厚生労働大臣は、労働者派遣事業に係る労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)の規定の運用に当たり、派遣就業は臨時的かつ一時的なものであることを原則とするとの考え方を考慮しなければならないこととされました(第25条関係)。
4 労働者派遣契約の内容
労働者派遣契約の当事者は、当該労働者派遣契約の締結に際し、派遣労働者が派遣労働に従事する事業所の名称等に加え、組織単位についても定めなければならないこととされました(第26条第1項関係)。
5 派遣先への通知
派遣元事業主は、労働者派遣をするときは、当該労働者派遣に係る派遣労働者が8の(1)の厚生労働省令で定める者であるか否かの別についても、派遣先に通知しなければならないこととされました(第35条第1項関係)
6 労働者派遣の期間
派遣元事業主は、派遣先の事業所等における組織単位ごとの業務について、3年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣を行ってはならないこととされました(第35条の3関係)。
7 特定有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等
(1) 派遣元事業主は、その雇用する有期雇用派遣労働者であって派遣先の事業所等における同一の組織単位の業務について継続して1年以上の期間労働者派遣に係る労働に従事する見込みがあるもの(以下「特定有期雇用派遣労働者」という。)等に対し、次の措置を講ずるように努めなければならないこととされました(第30条第1項関係)。
① 派遣先に対し、特定有期雇用派遣労働者に対して労働契約の申込みをすることを求めること。
② 派遣労働者として就業させることができるように就業(その条件が、特定有期雇用派遣労働者等の能力、経験等に照らして合理的なものに限る。)の機会を確保するとともに、その機会を特定有期雇用派遣労働者等に提供すること。
③ 派遣労働者以外の労働者として期間を定めないで雇用することができるように雇用の機会を確保するとともに、その機会を特定有期雇用派遣労働者等に提供すること。
④ ①から③までのほか、特定有期雇用派遣労働者等を対象とした教育訓練であって雇用の安定に特に資すると認められるものその他の雇用の安定を図るために必要な措置を講ずること。
(2) 派遣元事業主は、派遣先の事業所等における同一の組織単位の業務について継続して3年間当該労働者派遣に係る労働に従事する見込みがある特定有期雇用派遣労働者に対し、(1)の措置を講じなければならないこととされました(第30条第2項関係)。
(3) 厚生労働大臣は、(2)に違反した派遣元事業主に対し、指導又は助言をした場合において、当該派遣元事業主がなお(2)に違反したときは、当該派遣元事業主に対し、必要な措置をとるべきことを指示することができることとし、労働者派遣事業の許可の取消し事由として、指示を受けたにもかかわらずなお(2)に違反したときを追加することとされました(第14条第1項及び第48条第3項関係)。
8 労働者派遣の役務の提供を受ける期間
(1) 派遣先は、当該派遣先の事業所等ごとの業務について、派遣元事業主から派遣可能期間を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならないこととされました。
ただし、当該労働者派遣が無期雇用派遣労働者に係る労働者派遣、厚生労働省令で定める者に係る労働者派遣等であるときは、この限りでないこととされました(第40条の2第1項関係)。
(2) (1)の派遣可能期間は、3年とすることとされました(第40条の2第2項関係)。
(3) 派遣先は、当該派遣先の事業所等ごとの業務について、派遣元事業主から3年を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けようとするときは、当該派遣先の事業所等ごとの業務に係る労働者派遣の役務の提供が開始された日以後当該事業所等ごとの業務について(1)に抵触することとなる最初の日の1月前の日までの間((4)において「意見聴取期間」という。)に、3年を限り、派遣可能期間を延長することができることとされました。当該延長に係る期間が経過した場合において、これを更に延長しようとするときも、同様とすることとされました(第40条の2第3項関係)。
(4) 派遣先は、派遣可能期間を延長しようとするときは、意見聴取期間に、過半数労働組合等の意見を聴かなければならないこととされました(第40条の2第4項関係)。
(5) 派遣先は、(4)により意見を聴かれた過半数労働組合等が異議を述べたときは、当該事業所等ごとの業務について、延長前の派遣可能期間が経過することとなる日の前日までに、当該過半数労働組合等に対し、派遣可能期間の延長の理由等について説明しなければならないこととされました(第40条の2第5項関係)。
(6) 派遣先は、派遣可能期間を延長しようとする場合の過半数労働組合等からの意見の聴取及び過半数労働組合等が異議を述べた場合の当該過半数労働組合等に対する派遣可能期間の延長の理由等の説明を行うに当たっては、労働者派遣法の趣旨にのっとり、誠実にこれらを行うように努めなければならないこととされました(第40条の2第6項関係)。
(7) 派遣先は、派遣可能期間が延長された場合において、当該派遣先の事業所等における組織単位ごとの業務について、派遣元事業主から3年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けてはならないこととされました(第40条の3関係)。
(8) 厚生労働大臣は、派遣先が(1)、(4)、(5)又は(7)に違反しているとき等についても、当該派遣先に対し、必要な措置等をとるべきことを勧告することができることとし、勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができることとされました(第49条の2関係)。
9 特定有期雇用派遣労働者の雇用の推進
派遣先は、当該派遣先の事業所等における組織単位ごとの同一の業務について派遣元事業主から継続して1年以上の期間同一の特定有期雇用派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けた場合において、引き続き当該業務に労働者を従事させるため労働者を雇い入れようとするときは、当該業務に従事した特定有期雇用派遣労働者(継続して就業することを希望する者に限る。)を、遅滞なく、雇い入れるように努めなければならないこととされました(第40条の4関係)。
10 派遣先に雇用される労働者の募集に係る事項の周知
(1) 派遣先は、当該派遣先の同一の事業所等において派遣元事業主から1年以上の期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けている場合において、当該事業所等において労働に従事する通常の労働者の募集を行うときは、当該募集する労働者が従事すべき業務の内容等を当該派遣労働者に周知しなければならないこととされました(第40条の5第1項関係)。
(2) 派遣先は、当該派遣先の同一の事業所等において労働に従事する労働者の募集を行うときは、当該事業所等における同一の組織単位の業務について継続して3年間当該労働者派遣に係る労働に従事する見込みがある特定有期雇用派遣労働者(継続して就業することを希望する者に限る。)に対し、当該募集する労働者が従事すべき業務の内容等を周知しなければならないこととされました(第40条の5第2項関係)。
11 段階的かつ体系的な教育訓練等
(1) 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者が段階的かつ体系的に派遣就業に必要な技能及び知識を習得することができるように教育訓練を実施しなければならないこととされました。この場合において、当該派遣労働者が無期雇用派遣労働者であるときは、当該無期雇用派遣労働者がその職業生活の全期間を通じてその有する能力を有効に発揮できるように配慮しなければならないこととされました(第30条の2第1項関係)。
(2) 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の求めに応じ、当該派遣労働者の職業生活の設計に関し、相談の機会の確保その他の援助を行わなければならないこととされました(第30条の2第2項関係)。
12 直接雇用の推進
派遣元事業主がその雇用する派遣労働者等の雇用の安定を図るために講ずるよう努めることとされている措置として、派遣労働者以外の労働者としての就業の機会を確保することが含まれることを明記することとされました(第30条の4関係)。
13 待遇に関する事項等の説明
派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者から求めがあったときは、均衡を考慮した待遇の確保のため配慮すべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該派遣労働者に説明しなければならないこととされました(第31条の2第2項関係)。
14 派遣先における適正な派遣就業の確保等
(1) 派遣先は、派遣労働者を雇用する派遣元事業主からの求めに応じ、当該派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する労働者が従事する業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練については、派遣労働者に対しても実施するよう配慮しなければならないこととされました(第40条第2項関係)。
(2) 派遣先は、当該派遣先に雇用される労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設であって、業務の円滑な遂行に資するものについては、派遣労働者に対しても、利用の機会を与えるように配慮しなければならないこととされました(第40条第3項関係)。
(3) 派遣先は、派遣元事業主により派遣労働者の賃金が適切に決定されるようにするため、派遣元事業主の求めに応じ、派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する当該派遣先の労働者の賃金水準に関する情報を提供すること等の措置を講ずるように配慮しなければならないこととされました(第40条第5項関係)。
(4) (3)のほか、派遣先は、11の措置等が適切に講じられるようにするため、派遣元事業主の求めに応じ、派遣労働者の業務の遂行の状況その他の情報であって当該措置に必要なものを提供する等必要な協力をするように努めなければならないこととされました(第40条第6項関係)。
15 派遣元責任者
派遣元責任者の要件に、派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うに足りる能力を有する者として厚生労働省令で定める基準に適合するものであることを追加することとし、その職務に、派遣労働者についての教育訓練の実施及び職業生活の設計に関する相談の機会の確保に関することを行うことを追加することとされました(第36条関係)。
16 派遣元管理台帳及び派遣先管理台帳
無期雇用派遣労働者であるか有期雇用派遣労働者であるかの別等の事項を、派遣元管理台帳及び派遣先管理台帳の記載事項に追加するとともに、7の(1)又は(2)により講じた雇用の安定を図るために必要な措置を、派遣元管理台帳の記載事項に追加することとされました(第37条及び第42条関係)。
17 事業主団体等の責務
事業主団体は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等が図られるよう、構成員に対し、必要な助言、協力その他の援助を行うように努めなければならないこととし、国は、事業主団体に対し、派遣元事業主の労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関し必要な助言及び協力を行うように努めることとされました(第47条の3関係)。
1 労働契約申込みみなし制度
労働者派遣の役務の提供を受ける者が1の8の(1)又は(7)に違反して労働者派遣の役務の提供を受けた場合についても、労働契約の申込みをしたものとみなすこととされました(第40条の6関係)。
2 就業条件等の明示
派遣元事業主は、派遣労働者に対し就業条件等の明示をするに当たっては、派遣先が1の8(1)又は(7)に違反して労働者派遣の役務の提供を受けた場合には労働契約の申込みをしたものとみなされることとなる旨を併せて明示しなければならないこととされました(第34条第3項関係)。
1 検討
(1)政府は、この法律の施行後3年を目途として、改正後の労働者派遣法の施行の状況を勘案し、改正後の労働者派遣法の規定について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとされました(附則第2条第1項関係)。
(2) 政府は、(1)にかかわらず、通常の労働者及び派遣労働者の数の動向等の労働市場の状況を踏まえ、この法律の施行により労働者の職業生活の全期間にわたるその能力の有効な発揮及びその雇用の安定に資すると認められる雇用慣行が損なわれるおそれがあると認められるときは、改正後の労働者派遣法の規定について速やかに検討を行うこととされました(附則第2条第2項関係)。
(3) 政府は、派遣労働者と派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する派遣先に雇用される労働者との均等な待遇及び均衡のとれた待遇の確保の在り方について検討するため、調査研究その他の必要な措置を講ずることとされました(附則第2条第3項関係)。
2 この法律の施行に関し必要な経過措置を定めることとされました(附則第3条~第11条関係)。
3 この法律が施行されることに伴い、医療法、登録免許税法、住民基本台帳法、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律、建設労働者の雇用の改善等に関する法律及び港湾労働法において、必要な規定の整備(条ズレ・用語の整理など)が行われました(法附則第12条~第17条関係)。
この法律は、経過措置における一部の規定を除き、平成27年9月30日から施行されます。