政府が男性の育児休業取得を猛プッシュ!育休取得状況が公開義務に?!
<ひろたの杜 労務オフィス 山口善広/PSR会員>
◆育児介護休業法はどのように改正された?
今回の改正では、既存の制度をほぼ残しながら、新しい制度が追加されました。複数の取り組みがあるのですが、一度に実施されるのではなく、いくつかの段階に分かれていますので、順を追ってご説明しましょう。
① 令和4年4月1日施行
まず、事業主には育児休業を取得しやすい環境を整備することが求められます。具体的には、労働者に対する制度説明のための研修や相談窓口の設置などのいずれかを取り入れることで、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備が必要になります。
また、雇用する労働者またはその労働者の配偶者が、妊娠または出産をしたことの申出をしたときに、事業主は、育児休業の制度を周知するとともに、制度の取得意向を確認することが義務付けられます。さらに、これまでは有期雇用労働者が育児介護休業を取得する場合、引き続き雇用された期間が1年以上必要でしたが、今回の改正により撤廃されることになりました。
ただ、労使協定を締結することで現行のままとすることは可能です。ちなみに、有期雇用労働者が育児休業を取得するために必要な要件である、「子が1歳6か月になるまでの間に契約が満了することが明らかでないこと」については、そのまま残ります。
② 令和4年10月1日施行
ここが今回の改正の目玉になりますが、子の出生後8週間以内に4週間までの育児休業を柔軟に取得しやすくなる取り組みが新設されます。女性の場合は、子の生後8週までは産後休業をしていることがほとんどなので、主なターゲットは男性ということになりますね。
現行では、育児休業の取得の申出は1か月前までにする必要がありましたが、原則として2週間前までに申出すれば良いことになります。4週間までの育児休業を2回に分割して取得できるようになるとともに、労使協定を締結していれば、労働者と事業主との間で個別に合意することで休業中に就業することが可能になります。また、出生8週間後の育児休業についても2回に分割して育児休業を取得することができるようになります。したがって、合計4回に分けて育児休業を取得することができるようになるわけです。
あと、子が1歳なった時に保育所に入れないなどの理由で育児休業を延長する場合、現行の育児休業の開始日は、子が1歳・1歳半の時点に限定されていましたが、休業開始日がそれぞれ柔軟化されます。これにより、夫婦でそれぞれ育児休業を取るタイミングを調整することができるようになります。
③ 令和5年4月1日施行
この時期に到達すると、育児休業の取得状況についての公表が義務化され、毎年少なくとも1回、取得状況について公表することになります。ただ、公表義務の対象となっているのは、常時雇用する労働者数が1,000人を超える事業主です。このように、男性労働者にとっては育児休業を取得しやすいよう制度が整備されますが、事業主が労働者に対して育児休業の取得をプッシュしやすくなる制度はあるのでしょうか。
答えは、、、あります!
中小企業であれば、育児休業を取得した労働者1人に対して最大84万円が支給される助成金がありますのでご紹介しましょう。
◆労働者1人に対して最大84万円の助成金が?!
この助成金の名称は、両立支援等助成金にある、「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」です。中小企業であれば、子の出生後8週間以内に連続5日以上の育児休業を男性労働者に取得させると事業主に支給されるもので、支給額は、育児休業の取得が1事業主単位で1人目の場合、基本額は57万円ですが、生産性要件を満たすと72万円に増額されます。
また、個別支援加算の要件を満たすとさらに10万円が支給され、こちらも生産性要件を満たせば12万円に増額されますから、合計84万円となるわけです。個別支援加算というのは、男性が育児休業を取得しやすくなるような職場風土づくりの取り組みに加え、対象となる労働者に対して、育児休業を取得する前に個別面談などを実施して育児休業の取得をプッシュする取り組みを行なった場合に加算されます。
ただ、助成金の申請は、申請書を作成すればもらえるものではなく、育児休業の取得を後押しする取り組みも必要ですし、支給申請書の作成も複雑である上、労働局で審査が行われますので、助成金の申請をお考えの場合は、助成金申請のエキスパートである社会保険労務士にご相談されることをお勧めします。
<参考URL>
育児・介護休業法 改正ポイントのご案内
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000789715.pdf
両立支援等助成金
https://www.mhlw.go.jp/content/000754580.pdf