マイナンバーのガイドラインで作成を求められている「取扱規程」とは
「ガイドライン」(特定個人情報の適切な取扱いに関するガイドライン)で作成を求められている「取扱規程」は「就業規則」ではありません。「規程」という言葉から「就業規則」を連想してしまうのですが、ガイドラインでは「取扱規程」を次のように定義しています。
・個人番号を取り扱う事務の範囲と特定個人情報等の範囲を明確にし、
・実際に事務を取扱う担当者を明確にした上で、
・事務の流れを整理し、特定個人情報等の具体的な取扱いを定めたもの
具体的には、取得、利用、保存、提供、削除・廃棄の管理段階ごとに、取扱方法、責任者・事務取扱担当者及びその任務等について安全管理措置を織り込みながら定めていきます。
つまり、常に見直して修正していく業務マニュアルや業務フローであり、変更するたびに社員説明会を開催して意見書を添えて労働基準監督署に届け出る「就業規則」とは切り離して考えないと実務上、不都合が生じてしまいます。
「取扱規程」と「就業規則」の位置づけ
では、「就業規則」の作成義務のある事業場では「取扱規程」と「就業規則」との関係をどのように考えていけばよいでしょう。
マイナンバー制度については事務担当者に限らず、全従業員が制度を理解することが重要となるため、自社としてどのようにマイナンバーや特定個人情報を取扱うかを全従業員に周知しなければなりません。
そこで、新たに作成するようガイドラインでは求められてはいないのですが、「就業規則」を活用しましょう。「就業規則」は職場ルールを成文化したもので、全従業員が守るべきものであり、違反した場合には懲戒処分をすることも可能(懲戒処分を科すためには就業規則に規定しておくことが必要です)であるという性質上、マイナンバー制度について全従業員に知らせたいこと(遵守すべきことや禁止事項、会社の事務への協力等)を規定し周知します。服務規律として情報漏えいをしないこと等を規定しておけば情報の保護という意識を高めていくことにもつながります。
実務上は、「特定個人情報管理規程」というような就業規則の別則を作成し、「就業規則」の本則には、「特定個人情報等の取扱いについては「特定個人情報管理規程」による。」というように定めれば就業規則の本則をあまり変更せずにすみます。「取扱規程」(業務フローやマニュアル)は就業規則ではないため事務取扱担当者のみが閲覧できるよう制限すれば、安全管理措置としても有効です。
実務上のポイント
まとめると以下のようになります。
① 「取扱規程」は業務マニュアル・業務フローとして常に見直し修正する
② 「取扱規程」は事務取扱担当者のみが閲覧できるよう制限する
③ 全従業員に周知し、守らせたいルールは就業規則の別則として規定する
「取扱規程(業務フロー・業務マニュアル)」と「就業規則」のそれぞれの目的を明確にし、うまく活用してマイナンバー制度に対応していきましょう。