「歩合給に残業代を含めることとする会社の制度により、残業代が未払いになっているとして、京都市のタクシー会社の運転手計27人が未払いの残業代などの支払いを求めた訴訟の判決が、令和3年12月9日に京都地裁であり、同地裁は、会社側に計約1億500万円の支払いを命じた。」といった報道がありました。
同社の賃金は、基本給と歩合給の「基準外手当」などで構成されていいますが、裁判長は、雇用契約書などの書面上、「基準外手当を時間外労働の対価とする記載はない」と指摘し、歩合給は所定勤務時間内の賃金に当たり、残業代は別途支払う必要があると判断したようです。
また、同時に、会社側が労働時間に当たらないと主張していた長時間に及ぶ客待ちや移動の時間についても、労働時間に含まれるとの判断が示されたということです。
会社側の今度の対応は未定ですが、歩合給と残業代をめぐる過去の最高裁でも、労働基準法37条の割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断する前提として、「労働契約における賃金の定めにつき,通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要である」とされており、控訴したとしても、この要件を満たしているという判断を得るのは難しいかもしれませんね。
別の事件の最高裁の判例ですが、参考までに紹介しておきます。
〔参考〕令和2年3月30日最高裁判所第一小法廷判決〔いわゆる国際自動車(第二次上告審)事件〕(最高裁判所ホームページ)
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89433