改正女性活躍推進法「男女の賃金の差異」の公表と算定ルール

公開日:2023年1月12日

 

 女性活躍推進法により、民間企業の事業主(一般事業主)については、常時101人以上の労働者を雇用する場合に、女性の職業選択に資する情報の公表が義務付けられています(常時100人以下の労働者を雇用する場合は努力義務)。

 昨年7月の改正により、その情報の公表の項目に「男女の賃金の差異」が追加されたとともに、常時301人以上の労働者を雇用する一般事業主については、必ず「男女の賃金の差異」を含めて公表することが義務付けられました。

 この「男女の賃金の差異」については、算定のルールが設けられており、男性労働者の賃金の平均に対する女性労働者の賃金の平均を割合(%)で示すこととされています。

 公表する割合は、小数点第2位を四捨五入、小数点第1位まで表示し、また、「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」に区分して公表することとされています。

男女の賃金の差異の求め方のざっくりとした手順

Step1:次のように、各区分の平均年間賃金を求める。平均年間賃金は各区分ごとに総賃金÷人員数で算出。
(1)女性の「正規雇用労働者」の平均年間賃金
(2)男性の「正規雇用労働者」の平均年間賃金
(3)女性の「非正規雇用労働者」の平均年間賃金
(4)男性の「非正規雇用労働者」の平均年間賃金
(5)女性の「全労働者」(正規+非正規)の平均年間賃金
(6)男性の「全労働者」(正規+非正規)の平均年間賃金

※人員数について、労働時間が短いパート労働者については、正規雇用労働者の所定労働時間等の労働時間を参考として、人員数を換算しても差し支えない
(例:1日の所定労働時間が、正規は8時間、パートは4時間である場合、パート1人につき0.5人と数える)。

Step2:次のように、各区分の男女の賃金の差異の割合(%)を求める。
「正規雇用労働者」の男女の賃金の差異={上記(1)÷(2)}×100%
「非正規雇用労働者」の男女の賃金の差異={上記(3)÷(4)}×100%
「全労働者」の男女の賃金の差異={上記(5)÷(6)}×100%

 なお、公表に当たっては、割合(%)に加えて、その算出の前提とした重要な事項を付記する必要があります。

◆付記事項の例示
 ・対象期間:○○事業年度(○○年○月○日~○○年○月○日)
 ・賃金:通勤手当等を除く。
 ・正規雇用労働者:社外への出向者を除く。
 ・非正規雇用労働者:契約社員、アルバイト、パートが該当。
 ・パートについては、正規の所定労働時間(1日8時間)で換算した人員数を
  基に平均年間賃金を算出している。

 これが基本的な求め方です。

 では、非正規雇用労働者のみならず、正規雇用労働者のうち短時間勤務をしている者(短時間正社員、育児短時間勤務者等)についても、人員数について、換算を行って良いのでしょうか?

 厚生労働省は、次のような見解を示しています。
◯換算を行って差し支えない。
◯なお、正規雇用労働者のうち、短時間勤務者の人員数について、フルタイム労働者の所定労働時間等の労働時間を基に換算してもよいが、
・そもそも、短時間勤務者の基本給がフルタイム労働者の基本給を減額したものとなっているかどうか
・減額しているとして、どのような考え方・割合で減額されているか
については、個々の企業において決められていることである。
 個々の企業において、換算をするか否かを検討し、換算を行う場合には、適切な換算率の設定等を行っていただきたい。
◯また、当該換算を行った場合には、労働時間を基に換算している旨を重要事項として付記する必要があることに留意すること。

 なお、男女の賃金の差異の公表が必須とされていない常時雇用労働者数101人以上300人以下の企業でも、公表の項目として男女の賃金の差異を選択することは可能です。

 また、女性活躍推進法による情報の公表自体が努力義務とされている常時雇用労働者数100人以下の企業でも、男女の賃金の差異を含めた情報を公表することは可能です。

 男女の賃金の差異の解消が進んでいる企業では、積極的に公表したほうがよいですね。大きなアピールになると思います。

◆「男女の賃金の差異」を求めるにあたり、次の資料は参考になると思います。
 (いずれも、令和4年12月28日に改訂された最新版です。)
〔参考〕女性活躍推進法に基づく男女の賃金の差異の情報公表について(厚労省資料)
≫ https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000970984.pdf
〔参考〕女性活躍推進法に基づく「男女の賃金の差異」の公表等における解釈事項について
≫ https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000989506.pdf

 

 

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