確定拠出年金法等の一部を改正する法律の一部の施行期日及び確定拠出年金法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備等

公開日:2017年11月27日

 「確定拠出年金法等の一部を改正する法律(平成28年法律第66号)」の一部の施行により、いわゆる個人型DC小規模事業主掛金納付制度、簡易型DC制度、ポータビリティの拡充などが実施されることになっていましたが、その施行日が「平成30年5月1日」とされました。
 それに伴い、施行される規定に係る政令を規定することとされました。〔平成30年5月1日施行〕
 概要は以下の通りです。

〇確定拠出年金法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令(平成29年政令第291号)
〇確定拠出年金法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備等及び経過措置に関する政令(平成29年政令第292号)

1 確定拠出年金法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令関係

<平成30年5月1日から施行される規定の概要>
※DC:確定拠出年金  DB:確定給付企業年金
1.企業年金の普及・拡大
①事務負担等により企業年金の実施が困難な中小企業(従業員100人以下)を対象に、設立手続き等を大幅に緩和した『簡易型DC制度(簡易企業型年金)』を創設。
②中小企業(従業員100人以下)に限り、個人型DCに加入する従業員の拠出に追加して事業主拠出を可能とする『個人型DCへの小規模事業主掛金納付制度(中小事業主掛金納付制度)』を創設。

2.ライフコースの多様化への対応
DCからDB等へ年金資産の持ち運び(ポータビリティ)を拡充。
→就労形態が多様化する中、加入者の選択肢を拡大し、老後所得確保に向けた自助努力の環境を向上させるため、確定拠出年金(DC)から確定給付企業年金(DB)へのポータビリティ(年金資産の持ち運びを可能とすること)、及びDC・DBと中小企業退職金共済とのポータビリティ(事業再編による合併等を行った場合に限る。)を拡充。

3.DCの運用の改善
①運用商品を選択しやすいよう、継続投資教育の努力義務化や運用商品数の抑制等を行う。
②あらかじめ定められた指定運用方法に関する規定の整備を行うとともに、指定運用方法として分散投資効果が期待できる商品設定を促す措置を講じる。


2 確定拠出年金法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備等及び経過措置に関する政令関係

1.確定拠出年金法施行令の一部改正
(1)中小事業主掛金納付制度の実施要件等の規定
①個人型年金規約に定める事項として、中小事業主掛金の納付に関する事項を追加し、個人型年金規約の承認基準として、中小事業主掛金について前納及び追納することができないものであること、その額について個人型掛金拠出単位期間につき一回に限り変更することができること等を追加することとされました。
②中小事業主掛金を拠出する場合、掛金額を変更する場合や掛金を拠出しないこととする場合についても労働組合等の同意を必要とする旨を規定することとされました。

(2)中小事業主掛金の拠出方法の規定
①中小事業主掛金については、個人型年金加入者掛金の拠出にあわせて拠出できるものとされました。
②個人型年金加入者掛金について、当該12月間を区分して、その区分した期間(以下「拠出区分期間」という。)ごとに掛金拠出を行う場合は、個人型年金加入者掛金の拠出区分期間ごとに中小事業主掛金を拠出できるものとされました。

(3)簡易企業型年金の創設に伴う実施要件等の規定
簡易企業型年金の掛金額は定額とすることとされました。

(4)指定運用方法に関する規定の整備
①指定運用方法の選定及び提示に当たっては、労使や運営管理機関等において、加入者集団のリスク許容度や期待収益等を考慮・検討しながら、指定運用方法にふさわしい商品を決定する必要があるため、規約承認基準として、以下の規定を加えることとされました。
【企業型年金】
・指定運用方法は、企業型運用関連運営管理機関等が選定しようとしている指定運用方法について、当該企業型運用関連運営管理機関等が事業主に提示するとともに、当該事業主が当該指定運用方法について労働組合等と協議し、その結果を当該企業型運用関連運営管理機関等は尊重すること。
【個人型年金】
・指定運用方法は、個人型運用関連運営管理機関が連合会にあらかじめ指定運用方法及びその選定理由を提示すること。
・通常の運用の方法の選定及び提示同様、指定運用方法の数及び種類、並びに指定運用方法の特定期間及び猶予期間について、特定の者について不当に差別的取扱いを行わないことを規定する。
・通常の運用の方法の選定及び提示同様、指定運用方法の選定及び提示についても運営管理機関の説明義務の明確化及び説明義務違反に対する損害賠償責任が及ぶよう規定する。

(5)運用の方法の選定及び提示に関する基準等の見直し
①運用の方法の提示数の上限が、35本と定められました。
②対象運用方法を区分する事項を規定することとされました。
基本的には、契約の相手方、種類、期間等で区分し、債券を除く有価証券については国際標準化機構の規格に従い区分することとすることとされました。
区分する事項の細則は厚生労働省令で定めることとされました。
③運用の方法の選定の基準として、自社株ファンド等を選定する場合はそれ以外の区分から三以上、元本確保型商品を選定する場合にはそれ以外の区分から二以上の運用商品を選定することを定めることとされました。

(6)他制度間ポータビリティの拡充に伴う所要の措置
①DCから他制度に個人別管理資産を移換する場合、規約にその旨を定めることとされました。
②DCから他制度に移換する場合には、移換額の算定の基礎となった期間として移換先に引き渡す期間に当たるDCの加入者期間を通算加入者等期間から除くこととされました。
③企業型年金加入者の資格を喪失した場合又は企業型年金を終了する場合に、企業型年金加入者であった者に他制度への個人別管理資産の移換に関する事項についての説明を義務づけることとされました。
④合併等に伴うDCから中小企業退職金共済(以下「中退共」という。)への資産移換の申出は合併等を行った日から起算して原則1年を経過する日まで行うことができるものとされました。
⑤個人型年金加入者がDBの加入者資格を取得した場合、個人型年金加入者がDBに資産移換するときは、本人から特段の申出がない限り、その個人型年金加入者資格は、DBの加入者となった日に自動的に喪失するものとされました。

(7)DC間のポータビリティの拡充に伴う所要の措置
①個人型年金加入者が企業型年金加入者の加入者資格を取得した場合、個人型年金加入者が企業型年金に資産移換するときは、本人から特段の申出がない限り、その個人型年金加入者資格は、企業型年金加入者となった日に自動的に喪失するものとされました。
②他の企業型DCに加入していた者が企業型DCの加入者となったとき、老齢給付金の年金受給権を有していた場合は、個人別管理資産を加入先の企業型DCに移換しないこととされました。
③資格喪失者に係る記録関連業務を行う記録関連運営管理機関に対し、資格喪失から一定期間経過後も移換申出を行っていない資格喪失者への個人別管理資産の移換に関する事項についての説明を義務づけることとされました。
また、連合会に対し、自動移換者の個人別管理資産の移換に関する事項についての説明を義務づけることとされました。
④通算拠出期間を算定する場合には、他制度との移換に係る期間も考慮するものとされました。
⑤脱退一時金請求時に、同時に企業型DCの個人別管理資産を個人型DCに資産移換することを義務付けることとされました。
⑥企業型DC及び個人型DCの個人別管理資産につき、それぞれ一つの運営管理機関に管理の委託をできるようにすることとされました。

(8)その他所要の改正を行うこととされました。

2 確定給付企業年金法施行令の一部改正

(1)中途脱退者の定義変更
平成28年改正法において、DBから他制度への脱退一時金相当額の移換が可能な者とされる中途脱退者の定義を広げることでポータビリティを拡充しているため、これに伴う所要の措置を講ずることとされました。

(2)合併等に伴うDBから中退共への資産移換の基準の整備
平成28年改正法により可能となるDBから中退共への資産移換に関する基準として、以下の3点を規定することとされました。
・資産移換の申出は合併等を行った日から起算して原則1年を経過する日まで行うことができること。
・DBから中退共に資産を移換する額は省令で定める基準により額を算定すること。
・DBから中退共への資産移換に際して、積立金のうち移換者に係る分として算定した額が移換すべき額を下回る場合には、当該下回る額を事業主が掛金として一括して拠出すること。

(3)合併等に伴うDC又は中退共からDBへの資産移換の基準の整備
①DBがDC又は中退共から資産を受換する場合は、現行のDB間の資産移換同様、規約記載事項とすることとされました。
②平成28年改正法により可能となるDC又は中退共からDBへ資産移換する際には、移換された資産の算定の基礎となった期間の全部又は一部を加入者期間に算入することとされました。

(4)その他所要の改正を行うこととされました。

3 中小企業退職金共済法施行令の一部改正

(1)DB又は企業型DCから中退共への資産移換が行われた場合の掛金納付月数への通算方法等
①DB又は企業型DCから中退共へ資産移換が行われた場合、当該移換された移換額の算定の基礎となった期間の月数を上限とした当該移換額及び当該移換額に係る被共済者の中退共における掛金月額により算定される最大の月数を、当該移換額に係る被共済者の掛金納付月数へ通算することとされました。
②移換額のうち掛金納付月数への通算に係る額を控除した残余の額に対しては、年1%の利率を付与することとされました。

(2)その他所要の改正を行うこととされました。

4 その他の改正

①施行日前に移換された資産の運用関係の取扱い及び施行日前の指定運用方法の提示等に関する手続の準備に関する経過措置を講ずることとされました。
②その他所要の改正を行うこととされました。

この政令は、一部の施行前の準備規定を除き、平成30年5月1日から施行されます。

 

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