持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律(平成27年法律第31号)(抜粋)
1 標準報酬等に関する事項
① 標準報酬月額について、3等級区分を追加し、その上限額を139万円とするものとすることとされました(第40条第1項関係)。
② 標準賞与額の上限額について、年度における標準賞与額の累計額が573万円であるものとすることとされました(第45条第1項関係)。
〔解説〕保険料負担の公平化を図る観点から、標準報酬月額の上限に3等級追加し、標準賞与額の上限を引き上げるもの。
2 保険給付に関する事項
① 患者申出療養に関する事項
ア 患者の申出に基づき厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養を保険外併用療養費の支給の対象とするものとすることとされました(第63条第2項及び第86条関係)。
イ アの申出は、厚生労働大臣に対し、当該申出に係る療養を行う臨床研究中核病院(保険医療機関であるものに限る。)の開設者の意見書その他必要な書類を添えて行うものとすることとされました(第63条第4項関係)。
ウ 厚生労働大臣は、アの申出について速やかに検討を加え、必要と認められる場合には、当該申出に係る療養を患者申出療養として定めるものとするとともに、その旨を当該申出を行った者に速やかに通知するものとすることとされました(第63条第5項及び第6項関係)。
〔解説〕国内未承認の医薬品等を迅速に保険外併用療養として使用したいという患者の思いに応えるため、患者からの申出を起点とする新たな保険外併用療養の仕組みを設けたもの。
② 特定機能病院その他の病院であって厚生労働省令で定めるものは、患者の病状その他の患者の事情に応じた適切な他の保険医療機関を当該患者に紹介することその他の保険医療機関相互間の機能の分担及び業務の連携のための措置として厚生労働省令で定める措置を講ずるものとすることとされました(第70条第3項関係)。
③ 入院時食事療養費に関する事項
入院時食事療養費の食事療養標準負担額について、平均的な家計における食費及び特定介護保険施設等における食事の提供に要する平均的な費用の額を勘案して厚生労働大臣が定める額とするものとすることとされました(第85条第2項関係)。
〔解説〕入院と在宅療養の公平、若年層と高齢者層の公平を図る観点から、65歳未満の者に適用される入院時食事療養費の食事療養標準負担額についても、特定介護保険施設等における食事の提供に要する平均的な費用の額を勘案して定めることとするもの。
具体的な食事療養標準負担額は、今後、施行日までに、厚生労働大臣が定めて告示することになる。
④ 傷病手当金に関する事項
傷病手当金の額について、1日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12月間の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する額とするもの等とすることとされました(第99条第2項関係)。
〔解説〕休業直前に標準報酬月額を高額に改定し、高額な傷病手当金等を受給する事案を防ぐ観点から、給付の基礎となる標準報酬月額を、直近1年間の標準報酬月額の平均額に改めることとするもの(その額の30分の1に相当する額の3分の2が、1日当たりの傷病手当金の額)。
なお、受給直前に被保険者資格を取得し、高額の標準報酬月額を設定するケースも見られることから、被保険者期間が1年に満たない者については、当該者の被保険者期間における標準報酬月額の平均の30分の1と、その保険者の全被保険者の平均の標準報酬月額の30分の1とを比較し、いずれか低い額を基礎として傷病手当金の額を計算することとされている。
⑤ 出産手当金に関する事項
出産手当金の支給について、傷病手当金の支給に係る規定を準用するものとすることとされました(第102条第2項関係)。
3 保健事業に関する事項
保険者は、健康教育、健康相談及び健康診査並びに健康管理及び疾病の予防に係る被保険者及びその被扶養者(以下「被保険者等」という。)の自助努力についての支援その他の被保険者等の健康の保持増進のために必要な事業を行うよう努めなければならないものとすることとされました(第150条第1項関係)。
4 国庫補助に関する事項
① 全国健康保険協会(以下「協会」という。)が管掌する健康保険の事業の執行に要する費用のうち、被保険者に係る療養の給付等の額に対する国庫補助率について、当該療養の給付等の額に1,000分の130から1,000分の200までの範囲内において政令で定める割合を乗じて得た額とするものとすることとされました(第153条第1項関係)。
② ①の規定にかかわらず、協会が管掌する健康保険の事業の執行に要する費用のうち、被保険者に係る療養の給付等の額に対する国庫補助率について、当分の間、当該療養の給付等の額に1,000分の164を乗じて得た額とするものとすることとされました(附則第5条関係)。
③ 平成27年度以降の協会の国庫補助の額について、協会の準備金が法定準備金を超えて積み立てられる場合においては、一の事業年度において当該積み立てられた準備金の額に1,000分の164を乗じて得た額を、当該一の事業年度の翌事業年度の国庫補助の額から控除するものとすることとされました(附則第5条の4から第5条の6まで関係)。
④ 政府は、協会の一般保険料率を引き上げる必要があると見込まれる場合において、協会の国庫補助に係る規定について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすることとされました(附則第5条の7関係)。
⑤ 保険料に関する事項
協会及び健康保険組合が管掌する健康保険の一般保険料率について、1,000分の30から1,000分の130までの範囲内において、決定するものとすることとされました(第160条第1項関係)。
〔解説〕改正前は、「1,000分の30から1,000分の120までの範囲内」において決定するものとされていたが、上限を1,000分の10引き上げたもの。
6 社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険団体連合会への事務の委託に関する事項
保険者は、保険給付のうち厚生労働省令で定めるものの支給に関する事務、保険給付の支給、保健事業等の実施及び保険料の徴収等に係る情報の収集又は整理に関する事務並びに保険給付の支給及び保険料の徴収等に係る情報の利用又は提供に関する事務を、社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険団体連合会に委託することができるものとすることとされました(第205条の4関係)。
7 その他所要の改正を行うこととされました。
この法律は、平成28年4月1日から施行されます。ただし、4については公布日から施行されます。