注意していただきたい点として、使用者の「採用の自由」を認めた 最高裁判決(三菱樹脂事件)があり、この中で「企業が、応募者の採否決定にあたり、その思想・心情を調査し、そのために、その者からこれに関連する事項についての申告を求めることも、これを法律上禁止された違法行為とすべき理由はない」旨が述べられているため、「企業には採用の自由があり、どのような情報を調査してもよい」と考えられているケースがまだまだ見受けられますし、「採用の自由」を提言している専門家も多くみられます。しかし、この最高裁判決は、昭和48年の物であり、近年の個人情報やプライバシーの保護が強く求められている中では、様々な制約がかかることに留意しておきましょう。一例をあげると、一般的な健康診断結果を採否の判断とすることにすら慎重な対応をするよう、行政は求めていますので、精神疾患の罹患歴となれば、それ以上に慎重な対応が必要と考えられます。
次のaやbのような適性と能力に関係がない事項を応募用紙等に記載させたり面接で尋ねて把握したりすることや、cを実施することは、就職差別につながるおそれがあるので採用選考時に配慮するよう、厚生労働省から通知が出されています。
<a.本人に責任のない事項の把握>
・本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること
<b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合・学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
<c.採用選考の方法>
・身元調査などの実施 (注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります)
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
参考:厚生労働省HP「公正な採用選考について」
<ブレインコンサルティングオフィス>