【専門家の知恵】シフト制で労働時間を運用している場合は要注意!労働トラブルを避けるために必要なこと

公開日:2022年10月4日

<ひろたの杜 労務オフィス 山口善広/PSR会員>

 

 正社員やアルバイトなどの雇用形態を問わず、シフト制で従業員の方の労働時間を管理している場合、労働日や労働時間が不定期であるが故に従業員側の不満が爆発し、労働トラブルになることがあります。

 それは、シフト制での働き方について、労使の認識の違いが原因になることがあります。
 ではなぜ、トラブルが起きてしまうのか、トラブルを未然に防ぐにはどうすればいいのかをお話ししましょう。 

 

そもそも、シフト制とはどのような形態の労働をいうのか 

 「シフト制」とは、労働契約を結ぶ段階では労働日や労働時間が確定しておらず、たとえば1か月ごとに勤務表を作成して従業員に通知をすることで具体的に労働日や労働時間が確定する労働形態を指します。

 具体的には、1か月分の早番や遅番、夜勤、休日などを割り振ってシフト表を作成し、従業員の方に通知して働いてもらうような場合です。
 ということは、勤務日や勤務時間帯が不定期になるので、実際に決定したシフト表を従業員の方が見たときに、「こんなシフトになるなんて、募集要項や労働条件通知書に書いてなかった」となることがあります。

 したがって、従業員の方とのトラブルを防止するためには、まず雇入れの段階から対策を講じておくことが大切となります。 

 

従業員を雇うときに気をつけなければならないこと  

 従業員を募集するときには、応募者に対して業務の内容やお給料の額、労働時間などの労働条件を明示する必要があります。

 この明示は、職業安定法に定められていることなので、募集を行う者の義務になっています。このとき、労働条件はできる限り具体的かつ詳細に明示するように配慮する必要がありますが、応募者が募集要項を見て、労働条件について誤解を抱かせないようにすることが大切です。

 また、応募者と労働契約を締結するときには、あらためて労働条件について明示をした上で説明をして応募者に理解してもらうことがトラブルを防ぐために重要なことです。

 明示をする労働条件は、「従事すべき業務」や「始業及び終業の時刻」、「休日」、「賃金」などで、書面で明示することが原則になっています(労働者の希望があればメールなどでの明示も可能です)。

 労働者に対して、労働条件を書面で明示をすることについては、労働基準法で定められているものなので、違反をすると労働基準監督署から行政指導を受ける可能性がありますので、注意が必要です。

 ただ、シフト制を採用している職場では、労働契約締結の時点ではまだシフトが確定していないために始業時間や終業時間が確定できないことがあります。そのような時でも、たとえば「早番は8時30から17時30分まで」、「遅番は9時から18時まで」といった具合に原則の始業時間や終業時間が決まっている場合は、その旨を明示することになります。

 労使の認識がずれたまま労働契約を結んで従業員として働いてもらったとしても、「こんなことは聞いていない」と従業員の不満がたまっていくきっかけになりますので、最初が肝心ですね。

 では次に、シフトを組んでいくときに気をつけることをご説明しましょう。

 

シフトを組む際に注意しなければならないこと

 労働契約を締結するときに労働条件の明示を行なっていても、細かいことまですべてを明らかにすることは難しい場合もあり、微調整が必要になることもあります。

 実際にシフトを組む際に、最初に労使で認識を合わせておくべきことは、「一定の期間において目安となる労働日数や労働時間」と、「一定の期間において労働する可能性のある最大の労働日数や労働時間」です。

 たとえば、1か月ごとにシフトを組む場合は、1か月のうちシフトに組み込まれる日数などの目安をきちんと話し合っておくことで、労使の認識を一致させておくことが重要です。業務の繁閑によってシフト数がある程度増減するのは仕方ないとしても、3月は15日分のシフトが入っていたのに、4月は5日分しか入れてくれなかったというのでは、従業員の方の不満が一気に大きくなる可能性が出てきます。
 したがって、シフトを組む段階で従業員の方と話し合い、意見を聞いておくことがトラブルを防ぐために必要なのです。

 また、一旦シフトを組んでしまうと、労働日が確定しますから、会社側の都合で一方的に従業員の方の労働日をキャンセルして休ませると、労働基準法で規定されている休業手当を支払う義務が発生する可能性があります。

 もし、どうしても決定したシフトを変更する必要があるときは、従業員の方とよく話し合い、勤務日を振り替えるなどの措置を取るなど、お互いが納得して変更するようにしましょう。

 労働基準法上のルールがよく分からない、という場合はお近くの社会保険労務士にご相談されることをお勧めします。労働基準法だけでなく、労働に関する法律は複雑で法改正も頻繁に行われていますので、気軽に相談される環境を作っておかれると安心です。

参考URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22954.html 

 

プロフィール

 
ひろたの杜 労務オフィス(https://yoshismile.com)代表
社会保険労務士 山口善広
 

 

 

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