<ひろたの杜 労務オフィス 山口善広/PSR会員>
働き方改革や、副業・兼業の解禁、学び直しの推進などの風潮により、「週休3日制」が脚光を浴びはじめています。一部の大企業では、すでに週休3日制を導入して成果をあげている会社もあります。「じゃあウチの会社も!」と週休3日制を導入する前に、なぜ週休3日制を導入するのか、どのような方式で導入するのかをきちんと検討しておかないと、後で後悔することになるかも知れません。ここでは、週休3日制について必要な知識をお話していきますので、導入を検討されている方はぜひ読み進めてみてください。
週休3日制のメリット・デメリット
「週休3日制」という言葉は、今どきの労働者にとって非常にウケるワードです。特に、ワークライフバランスを重視する人にとっては、魅力的に映るでしょう。ですので、企業側としても週休3日制の働き方をPRすることで、先進的な企業であるというイメージを押し出すことができます。具体的には、若い年齢層や子育て中の労働者、親族の介護を行なっている人など幅広い人材にもアピールすることができそうです。
ただ、労働日が減る分、業務の穴埋めをどのようにするのかについては、社内で調整をする必要が出てくるでしょう。特に、「この仕事はあの人しかできない」といった業務の進め方をしている場合、休日が増えることで業務の遂行に障害が起きる可能性がありますので、業務の透明化を進めて誰でも業務ができる状態にしておく必要が出てくるかも知れませんね。
とはいっても、そのような手間をかけてでも業務を透明化することは、企業にとってメリットの方が大きいですから、週休3日制に取り組む価値はあると言えます。
では、週休3日制度はどのような制度なのかをお話ししていきましょう。大きく分けて3つの方法がありますので、あなたの会社にとって取り入れやすい仕組みを見つけていただければと思います。
1 休みが増えても賃金額はそのまま。労働日の所定労働時間を増やす
こちらの方法では、休日を増やすことで減少した労働時間を、他の労働日に振り替えることにより、1週間で見たときの労働時間を減らさないようにする措置です。
たとえば現在、1日8時間、週5日の労働日を設定している企業で休日を1日増やすと、8時間の労働時間が減ることになります。その減少した労働時間を、他の労働日に2時間ずつ振り替えて1日の労働時間を10時間にすることで、週休3日制を実現させようというものです。
ただ、労働基準法では、原則として休憩時間を除いて1週間につき40時間、1日8時間を超えて労働させることができませんので36協定を締結して労基署に届け出る必要があります。で、8時間を超えて労働させる2時間については、時間外の割増賃金を支払う必要が出てくるのですが、変形労働時間制を導入し、所定労働時間を10時間に設定すれば労働時間が10時間になるまでは割増賃金を支払う必要をなくすことも可能です。
リスクとしては、1日あたりの労働時間が増えるので、労働者の負担が増しますから、休憩時間をどのように取り入れるかも合わせて検討したいところです。
2 休日を増やす分、賃金額を減少させる
1日分の労働時間がなくなる分、お給料の額もその分減らすよ、という方法です。企業側にとっては、コストが下がる分、魅力的に映る措置ですが、労働者側にとっては収入が減るわけですから反発が出るかも知れません。特に子育て世代など、収入を最重要視していると思われる労働者がいる場合は、きちんと納得をしてもらえるかが、導入の成否を分けると言えるかも知れません。また、週休3日制を導入して賃金をカットすることは、ノーワーク・ノーペイとは言えず、労働条件の不利益変更にあたる可能性もありますので、導入までに労使できちんと話し合う必要があります。
3 休日を増やしても、賃金額を減らさず、労働時間も増やさない
労働者にとっては一番受け入れられやすい措置と言えます。逆に言えば、企業側にとっては、一番導入したくない方法かも知れません。稼働日数が減る分、売上を維持して行くには、現状の業務の進め方よりも生産性を上げる必要が出てきます。そういう意味では、企業を活性化させる起爆剤になる可能性があります。休日が増えても労働者にとっては賃金が保証されているので、学び直しによるスキルアップを企業が後押しをしやすい利点があり、人材の底上げにも役立ちそうです。
いかがでしょうか。週休3日制といっても、いろいろな方法がありますので、どの制度が合うのか慎重に検討する必要があります。
また、週休3日制を導入するにしても、いきなり労働者全員に適用するのではなく、まずは希望者を募り、制度をよく理解してもらった上で利用してもらい、制度を都度ブラッシュアップしていきながら適用範囲を広げていく方法をお勧めします。
もし、週休3日制に興味がおありでしたら、制度の検討や導入までのプロセスなどを整備することは企業の負担も大きいですので、労務管理のプロであるお近くの社会保険労務士へご相談されてはいかがでしょうか。
プロフィール