令和5年1月23日、第211回国会が召集されました。
毎年1回、1月中に召集される通常国会では、内閣総理大臣により、その年の内閣全体の基本方針を示すものとして、施政方針演説が行われるのが通例となっています。
今国会においても、岸田総理がこれを行いました。
報道では、岸田総理が、子ども・子育てを最重要政策に位置づけ、「従来とは次元の異なる少子化対策を実現する」と表明したことが話題になっています。
企業実務や社会保障に着目すると、次のような方針が表明されている点が気になるところです。
●新しい資本主義
・物価高対策
まずは、令和4年度第2次補正予算の早期執行など、足下の物価高に的確に対応します。
経済あっての財政であり、経済を立て直し、そして、財政健全化に向けて取り組みます。
・構造的な賃上げ
そして、企業が収益を上げて、労働者にその果実をしっかり分配し、消費が伸び、更なる経済成長が生まれる。この好循環の鍵を握るのが、「賃上げ」です。
まずは、足下で、物価上昇を超える賃上げが必要です。
政府は、経済成長のための投資と改革に、全力を挙げます。公的セクターや、政府調達に参加する企業で働く方の賃金を引き上げます。
また、中小企業における賃上げ実現に向け、生産性向上、下請け取引の適正化、価格転嫁の促進、さらにはフリーランスの取引適正化といった対策も、一層強化します。
そして、その先に、多様な人材、意欲ある個人が、その能力を最大限活かして働くことが、企業の生産性を向上させ、更なる賃上げにつながる社会を創り、持続的な賃上げを実現していきます。
そのために、希望する非正規雇用の方の正規化に加え、リスキリングによる能力向上支援、日本型の職務給の確立、成長分野への円滑な労働移動を進めるという三位一体の労働市場改革を、働く人の立場に立って、加速します。
一方で、企業には、そうした個人を受け止める準備を進めていただきたい。
人材の獲得競争が激化する中、従来の年功賃金から、職務に応じてスキルが適正に評価され、賃上げに反映される日本型の職務給へ移行することは、企業の成長のためにも急務です。本年6月までに、日本企業に合った職務給の導入方法を類型化し、モデルをお示しします。
・資産所得倍増プラン
長年の懸案である「貯蓄から投資へ」の流れを実現できれば、家計の金融資産所得の拡大と、成長資金の供給拡大により、成長と資産所得の好循環を実現できる。
そう考え、NISAの抜本的拡充や、恒久化を実現し、5年間でNISAの総口座数と、買付額を倍増させることにしました。
●こども・子育て政策
急速に進展する少子化により、昨年の出生数は80万人を割り込むと見込まれ、我が国は、社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況に置かれています。こども・子育て政策への対応は、待ったなしの先送りの許されない課題です。
こども・子育て政策の強化に向けた具体策の検討を進めていきます。
検討に当たって、何よりも優先されるべきは、当事者の声です。年齢・性別を問わず、皆が参加する、従来とは次元の異なる少子化対策を実現したいと思います。
本年4月に発足するこども家庭庁の下で、今の社会において、必要とされるこども・子育て政策を体系的に取りまとめつつ、6月の骨太方針までに、将来的なこども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示します。
●新型コロナ
足下の感染状況については、感染防止対策や医療体制の確保に努め、いわゆる第8波を乗り越えるべく、全力を尽くしてまいります。
そして、原則この春に、新型コロナを「新型インフルエンザ等」から外し、五類感染症とする方向で、議論を進めます。これに伴う医療体制、公費支援など様々な政策・措置の対応について、段階的な移行の検討・調整を進めます。
最後は、「引き続き、国民の皆さんの御理解と御協力をお願いいたします。御清聴ありがとうございました。」として、演説が締めくくられました。
今国会の会期は、令和5年6月21日までの150日間。
政治の信頼を回復し、効果的な政策を実現させてほしいですね。
<第211回国会における岸田内閣総理大臣施政方針演説>
https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2023/0123shiseihoshin.html