<フォレストコンサルティング経営人事フォーラム代表 松井 勇策>
第二章:生成AIがもたらす雇用の変化、たとえばダイバーシティ観点
<前回の記事> 第一章:生成AIの普及とそれによる影響・人的資本経営
予測される未来において、生成AIが職場に浸透することで、たとえば多様性と活躍の観点において重要な変化が生じると予想されます。生成AIは、資料作成や文書生成などの業務を効率化するところにまず威力を発揮します。特に、事務や業務支援、リサーチ、カスタマーコミュニケーションなどの職種などに大きな力を発揮すると予測されます。情報収集やコミュニケーションの効率化など、多くの利点が存在します。
こうした業務は、女性が多く担っている業務領域になります。生成AIをうまく使用することで、時間管理の改善により、女性は仕事と家庭の両立を容易にすることができます。しかしながら、生成AIが事務的業務やコミュニケーションの効率化に一役買う一方で、仕事を奪う可能性もあります。そのようなリスクをもたらす状況は既に進行中であり、ジェンダー格差の拡大をもたらす可能性があります。
国際通貨基金(IMF)が2018年に発表した「女性・技術・仕事の未来 Women, Technology, and the Future of Work」では、AIによる雇用への影響が特に女性に大きなインパクトを与えることが強調されており、特に非正規雇用や事務業務、支援的な業務に従事する日本の女性には大きな影響があると指摘されています。
(出典:「AIが日本の雇用に与える影響の将来予測と政策提言」より各国別の自動化されるリスクの男女比(独立行政法人経済産業研究所RIETI 上席研究員 岩本晃一)
たとえばこうした問題に対応するために、企業としてどのような姿勢を取るのかは経営上の大きな要素になってきます。企業内のリスキリングや人事体制上の工夫の必要性が非常に大きいことは言うまでもなく、人材戦略上どのように位置づけるのかを考えていく必要があります。また、育成においては人間の仕事における価値をより高めるためのキャリアパスや育成計画に注力する必要があります。
さらに、こうしたダイバーシティ上の課題は人的資本経営の実施の上で広範囲な領域に影響を及ぼすものです。さらに、女性活躍推進法や金融商品取引法上の情報開示においても重大な課題となってきます。人的資本経営との関わりで捉えることが必要です。
≫ChatGPTなどの生成AIがもたらす経営と雇用の変化、対応のために必須となる人的資本経営~第三章~
プロフィール
社会保険労務士・公認心理師・WEBエンジニア
(人的資本関係の資格)GRIスタンダード修了認証 ISO30414 リードコンサルタント 松井 勇策
フォレストコンサルティング経営人事フォーラム代表 https://forestconsulting1.jpn.org/
情報経営イノベーション専門職大学 客員教授(専門:人的資本経営 雇用実務)
東京都社労士会 先進人事経営検討会議 議長・責任者
早くから人的資本経営の実践・研究に取り組み、社会保険労務士としての実務知見を交え、多くの企業で人的資本経営の導入支援、セミナー等で人的資本経営の実務面にフォーカスした情報発信を精力的に展開。直近では、人的資本経営の基礎知識と実務に特化した初のWEB検定「人的資本経営検定 BASIC」を全面監修している。