2022年10月から「短時間労働者に対する社会保険の更なる適用拡大」が実施されていますが、その適用要件の一つである「月額賃金88,000円以上(年収106万円以上)」は、どのように判断するのでしょうか?
10月からは新たに特定適用事業所となる企業(厚生年金保険被保険者数が常時101人~500人)では、次の要件に該当するパート社員等も、健康保険・厚生年金保険の被保険者として取り扱う必要があります。
・1週間の所定労働時間が20時間以上
・月額賃金88,000円以上(年収106万円以上)
・学生でない
注)いわゆる4分の3基準を満たす社員は、改正後のルールに当てはめるまでもなく、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。
ここで、「月額賃金88,000円以上(年収106万円以上)」という要件が重要になってくるわけですが、具体的にはどのように判断するのでしょうか?
注意したいのは、ここでいう「月額賃金」(短時間労働者の被保険者資格の取得要件である月額賃金)は、「標準報酬月額の基礎となる報酬月額」とは、算定方法が異なるという点です。
◎ 「月額賃金」の算定基礎を確認しておきましょう。
→月額賃金88,000円の算定対象は、基本給と諸手当で判断します。
ただし、以下の(1)~(4)までの賃金は算入されません。
(1)臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
(2)1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
(3)時間外労働に対して支払われる賃金、休日労働と深夜労働に
対して支払われる賃金(割増賃金等)
(4)最低賃金において算入しないことを定める賃金(通勤手当、家族手当等)
なお、年収106万円以上というのは、あくまで88,000円を年額に換算した参考値で、月額賃金が88,000円以上であるかないかのみによって、要件を判断します。
◎ 上記の「月額賃金」と「標準報酬月額の基礎となる報酬月額」との違いは、 簡単にいうと次のとおりです。
→報酬月額には、労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもので被保険者の通常の生計に充てられる全てのものが含まれます。
このため、短時間労働者の被保険者資格の取得に当たっての要件(月額賃金)の判定の際に算入しなかった諸手当等も加味して報酬月額を算出します。
たとえば、“通勤手当”については、「月額賃金」には算入しない、「標準報酬月額の基礎となる報酬月額」には算入するということになります。
適用拡大の実施に伴い、新たに被保険者資格となる短時間労働者がいる場合、その資格取得時の「標準報酬月額の基礎となる報酬月額」を算出する際には、「月額賃金」の算出方法と混同しないようにしましょう。
〔参考〕「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の更なる適用拡大に係る事務の取扱いに関するQ&A集」(厚労省)
≫ https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T220322T0040.pdf