「子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充」を念頭に近年目まぐるしい法改正を経ている育児介護休業法は2025年の4月にも更なる改正があります。
端的には、2025年4月の改正は労働者目線ではプラスの法改正であり、注目度も高いことから、当然、人事労務担当者も就業規則の改定を始め、一定の習熟が求められます。
今回は2025年4月以降に改正される育児介護休業法について施行日順に段階的に解説します。
改正の概要
平成時代に創設された育児介護休業法も時代は令和へと移り変わり、様々な変化が到来しています。
創設当時と現代では働き方の根幹が変化しており、より時代に合致した働き方とそれらを踏まえた法令のあり方が模索され続けています。
そこで、前述の子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充や介護離職の防止を図るための措置等、複数項目の法改正を控えています。
企業側が対応するにあたって
まずは後述する具体的な法改正内容の概要を理解し、企業規模に応じて、具体的に対応が必要なタスク(併せて担当者のアサイン)に落とし込んでいく必要があります。
また、近年では様々な情報デバイスによって情報発信が行われており、そのこと自体は時代の恩恵ではあるものの、(育児介護休業法に関わらず)労使間で複数の論点にわたって認識齟齬が生まれている場面に多く遭遇します。
一度認識した「認識の書き換え作業」は時間を要することから、そのような事態になる前に企業側から先行的に改正内容の周知啓蒙を行うことが重要と考えます。
我が国の99%を占める中小企業であっても、後述する残業免除の対象範囲の拡大、休暇制度の対応は避けて通ることはできず、人手不足ではあっても、仕事の分担についても一度膝を付け合わせて検討する必要があります。
2025年4月の法改正内容(2025年4月1日施行)
所定外労働の制限の拡大(2025年4月1日施行)
3歳に満たない子を養育する労働者が請求することで、所定外労働の制限(いわゆる残業免除)を受けることが可能であったところ、法改正後は小学校就学前の子を養育する労働者まで拡充され、請求することが可能となります。
育児のためのテレワークの導入の努力義務化(2025年4月1日施行)
コロナ禍で脚光を浴びたテレワークについても、3歳に満たない子を養育する労働者がテレワークを選択できるように、一定の措置を講ずるよう事業主に努力義務化として課されることとなります。
子の看護休暇の見直し(2025年4月1日施行)
名称そのものが「子の看護休暇」から、「子の看護等休暇」となります。また、取得事由について、これまで病気や怪我、予防接種や健康診断に限定されていたところ、入園(入学)式・卒園式も追加されることとなります。
また、労使協定の締結によって除外できる労働者については、「引き続き雇用された期間が6か月未満の労働者」が撤廃され、「週の所定労働日数が2日以下」のみが除外できる労働者の対象ということになります。
育児休業取得状況の公表義務の拡大(2025年4月1日施行)
従業員数が1,000人を超える企業に公評が義務付けとされていましたが、法改正後は従業員数が300人を超える企業にまで拡大されます。
介護離職防止のための個別の周知・意向確認、並びに雇用環境整備等の措置の義務化(2025年4月1日施行)
介護離職の問題は我が国の喫緊の課題であり、今後も介護に関わる相談は増えることはあっても減ることは想像し難い状況です。
介護に直面した旨を申し出た労働者に対しては、個別の周知や意向確認が必要となることから、より早い段階での両立支援制度に対する情報提供、仕事と介護の両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備を進める等の準備が必要です。
そして、介護休暇について、労使協定において「引き続き雇用された期間が6ヶ月未満の労働者」を除外する仕組みがありましたが、これを廃止することとなります。
2025年10月の法改正内容(2025年10月1日施行)
柔軟な働き方を実現するための措置等(2025年10月1日)
3歳以上、小学校修学前の子を養育する労働者に関して、柔軟な働き方を実現するための措置が義務付けとなります。
併せて、事業主が選択した措置について、労働者に対する個別の周知・意向確認の措置が必要となり、具体的な項目として次の項目が選択肢です。
- 始業時刻等の変更
- テレワーク等
- 保育施設の設置運営等
- 新たな休暇の付与
- 短時間勤務制度
上記の選択肢の中から2つ以上の制度を選択して設置する必要があります。なお、テレワークについては、月10日、新たな休暇の付与については年10日が水準となります。
仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取(2025年10月1日)
後述する介護離職防止のための意向確認等と同様に、妊娠や出産の申し出や子供が3歳になる前に、労働者の育児と仕事の両立に関する個別の意見聴取や配慮が事業主に義務付けられます。
具体的な配慮の例としては、勤務時間帯や勤務地等の配慮や調整、両立支援制度の利用期間の見直しや労働条件の見直し等が盛り込まれる予定です。
最後に
実務上は就業規則の改正と労働者からの相談対応に多くの時間を要すると考えます。人事労務担当者としての他の通常業務もあることから、施行日から逆算した計画的な改正対応が必要となります。
プロフィール
みのだ社会保険労務士事務所 代表 社会保険労務士 蓑田真吾(https://www.minodashahorou.com)
1984年生まれ。社会保険労務士。都内医療機関において、約13年間人事労務部門において労働問題の相談(病院側・労働者側双方)や社会保険に関する相談(同左)を担ってきた。対応した医療従事者の数は1,000名を超え、約800名の新規採用者、約600名の退職者にも対応してきた。社労士独立後は労務トラブルが起こる前の事前予防対策に特化。現在は様々な労務管理手法を積極的に取り入れ労務業務をサポートしている。また、年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革に関する実務相談を多く取り扱い、書籍や雑誌への寄稿を通して、多方面で講演・執筆活動中。
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