<酒井世津子社会保険労務士事務所 酒井世津子/PSR会員>
近年、働き方改革による長時間労働の是正と並行して、「生活習慣病の予防、ストレスチェックの有効活用、メンタルヘルス対策、社内での面談の実施、産業ヘルスケア」など、企業側が従業員に対して安全衛生面を配慮する意識が高まっています。以前は、主に大企業での福利厚生面に於ける取り組みという印象もありましたが、コロナ禍をきっかけとして、最近では中小企業も従業員の健康管理への関心が強くなって来ました。そこで今回は「健康経営」についての概要と効果、導入時のポイント等を解説します。
参考サイト
- 経済産業省「健康経営」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_keiei.html - 健康経営優良法人認定制度
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html - 健康経営の増進について/経済産業省 ヘルスケア産業課(令和4年6月)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeiei_gaiyo.pdf
「従業員の健康が企業の発展に繋がる取り組み」を目指します
「健康経営」とは、「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」を言います。
正確な内容とするために、経済産業省のホームページを引用して説明します。
(引用開始)
「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。
健康経営は、日本再興戦略、未来投資戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つです。
(引用終わり)
従業員の健康は、生産性の向上と安定した雇用の継続に必要な要素です
近年、「長時間労働の改善、過重労働対策、生活習慣病の予防、がん・その他の疾病と仕事の両立支援、ストレスチェックやメンタルヘルス対策」などに積極的に取り組む企業が増えてきました。
健康経営の取り組みとして、定期的な面談で従業員の健康状態を把握し、疾病や負傷の予防措置を講じるほか、福利厚生面で健康診断のサポートや産業ヘルスケアを導入する傾向が高くなっています。
その結果、「従業員のモチベーションアップ、心身の健康増進、業務の生産性の向上、 離職率や休職率の低下」などが認められています。
筆者の把握している事例では、スポーツジムの会費を支援する制度を導入したところ、従業員からは「援助があることでジムに通いやすくなり、運動の機会が以前より多く得られている」「コロナ禍で様々なストレスが蓄積されているが、体を動かす機会が増えることでリフレッシュ出来ている」「体力の増進を実感している」など、前向きな感想が多いです。
そして企業側からは、「心身の不調を訴える従業員の減少」「従業員のモチベーションの向上」「コミュニケーションの活性化」「従業員の家族も使用可能な福利厚生システムを導入した結果、労使関係が更に良好な関係性に発展している」などの効果が生じており、非常に良好な結果に繋がっています。
導入していく上では、企業側が費用負担をクリアする大きな課題があります。内容によっては大きな金額となり得ますので、「トライアル的に少しずつ導入する」「従業員の感想や意見、実際の利用状況を参考にして契約内容を見直しながら運用する」など、計画的な取り組みが望まれます。
「ホワイト企業」としての取り組みに関する認定制度も注目されています
健康経営には、優良法人認定制度「ホワイト企業」という認定制度があります。
経済産業省ホームページの引用を元に解説します。
(以下、経済産業省サイトより引用)
健康経営優良法人認定制度とは、地域の健康課題に即した取組や日本健康会議が進める健康増進の取組をもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度です。
健康経営に取り組む優良な法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的に評価を受けることができる環境を整備することを目標としています。
「健康経営優良法人」に認定されると、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的な評価を受けられます。
(引用終わり)
健康経営優良法人認定制度に関しては、以前は大企業向けというイメージがありました。しかし、現在、中小規模法人部門 上位500法人が「ブライト500」として認定されています。
各種顕彰制度を通じて、健康経営に取り組む法人を「見える化」していくことで、企業が社会的な評価を受けることができる環境の構築が目的であると共に、取り組む企業と従業員双方のモチベーションの向上や健康増進効果に繋がっていることが分かります。
コロナ禍をきっかけに、以前に増して中小企業も「従業員の健康や生活、人生のサポートを積極的に行おうという取り組み」への関心が高まっています。
一例として、今の時期であれば、「インフルエンザの予防接種の費用を企業側が援助すること」が挙げられます。
その他、「業務時間内に使用するマスクの費用援助」「人間ドックの費用援助」などが取り組みやすい事例でしょう。筆者は、企業の経営資源の中で一番重要であり大切にしなければならないものは「人」であると考えています。生涯現役社会を構築するには、健康疾病の予防と日々の健康管理、健康増進や早期発見、適切な治療などの多様な取り組みが必要不可欠です。
誰しも心身の健康は唯一無二であり、従業員が心身ともに健康であることは「従業員の幸せ」「従業員を支える家族の幸せ」「従業員の健康と幸せは企業の幸せであり、企業の発展に不可欠な要素」だと言えます。
企業も従業員も「お互いが健やかで幸せである様に」 その願いを込めて、健康経営という視点から労務管理を検討し、実施していくことは非常に大切だと考えています。
注:「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
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