採用活動は順調?採用管理の数値化について
<社会保険労務士たきもと事務所 瀧本 旭/PSR会員>
採用活動の最終目標は、もちろん質・量ともに必要な人員の確保だ。近年の売り手市場の環境では、受け身の姿勢で選考を行なっていては、目標未達で終わりかねない。そのため、採用施策を実行する前に、数値に基づいた精度の高い採用目標達成のシナリオを想定・計画することがカギとなってくる。それによって、採用が順調に進んでいるのか、どこかに問題があるのかが把握しやすくなり、適切なPDCAを回すことができるからだ。今回は、採用活動における、数値に基づくPDCAについて考えてみたいと思う。
◆採用管理におけるPDCAの数値化とは?
1. PLAN
採用必要数を充足させるためには、各プロセスにおいて「この目標を達成すれば、最終目標が達成される」というKPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)を最終目標から逆算して設定することが有効だ。
数値として客観的な判断基準を持つことで、勘や経験などの属人的な判断のみに頼らない、再現性を持った判断が可能になる。
採用は主に、(1)母集団の形成、(2)書類選考、(3)面接、(4)内定というフローに基づいて行われるが、まずは、募集経路や職種別に各プロセスにおける歩留まり率の実績を出し、状況の把握をすることから始める。具体的には、(2)書類選考通過率、(3)面接実施率、(4)内定数、内定承諾数などの数値が算出できる。
例えば、今期の(1)応募数が100名、(2)書類選考通過数が80名(80%)、(3)面接数が50名(62%)、(4)内定数が10名(20%)、最終的に採用できた内定承諾数が5名(50%)だったとする。
そして来期の目標採用数が仮に10名だったとすると、今期実績の歩留まり率から計算すると、(4)内定数は20名、(3)面接数は100名、(2)書類選考通過数は161名、(1)応募数は201名の確保が必要という計算になる。
それぞれのフローに基準となるKPIを設定しておくことで、随時、状況の判断ができるようになるというわけだ。
2. DO
次に、実際に計画に沿って業務を実行していく。ここでは受け身の対応ではなく、応募を取りこぼさないよう、応募者と密にコンタクトをとりながら、“攻め”の姿勢で臨んでいくことが大切だ。
日々の成果が数値として出るが、採用活動は対人のコミュニケーションが大きく影響する業務でもある。応募者対応の際は、特に問題意識を持って接していくことで、改善点の発見につながる。
3. CHECK
次に、定期的に数値の集計を行い、採用進捗の確認と評価を行う。KPIと実績を照らし合わせると、「面接への呼び込みが足りていない」、「そもそも応募数が足りていない」など、どのフローに問題があるのかが見えてくる。
また、選考に進んだ数だけではなく、離脱した応募者数(選考辞退数、内定辞退数など)からも、問題があぶり出せることが多々ある。選考辞退数が多いのであれば、「面接の場所や時間帯は適正か?」、「採用担当の電話やメール対応に問題はないか?」、「求人原稿の記載内容とのギャップはないか?」など、さらに細分化して原因の分析を行うと、対策が見えてくる。
4. ACTION
次に、検討した対応策を実施し、改善していく。採用の仕事は特に、応募者からの反応がダイレクトに返ってくるため、改善の結果が見えやすい仕事だ。感度を高く持ち、いかにスピード感を持って改善を繰り返していくかが、より確実な成果につながる。
◆最後に
2018年10月、経団連は、大手企業の採用面接の解禁日などを定めた指針を2021年春入社の学生から廃止することを決めた。よって今後は新卒も、通年採用や中途採用にシフトしていくことが予想される。客観的な数値に基づく再現性の高い指標に基づいたPDCAを回すことで、さらなる確度を持って、環境の変化にも対応できる、採用活動を行っていけるようにしたい。
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