過去のコラムで、「リスキリング」や「選択的週休3日制度」「特別休暇」など従業員のエンゲージメントが高まる取り組みについてご紹介してきました。
13回目のコラムでは、魅力ある職場づくり推進の一環となり、従業員のエンゲージメントも高まる「積立休暇」制度についてご説明いたします。
「積立休暇」制度とは?
「積立休暇」とは法的な定めがある休暇ではなく、実施が任意の休暇です。失効した“年次有給休暇”を積み立て、病気の療養やケガの治療などが発生した際に引き続き利用できる制度に基づく休暇となります。この休暇制度を「積立休暇制度」と言ったり、「失効年休積立制度」とも言ったりします。
年次有給休暇を積み立てていることから、その性質上、社員は有給扱いとして利用できます。積立休暇制度を導入することは福利厚生の充実となり、結果、従業員のエンゲージメントの向上につながります。
積立休暇制度(失効年休積立制度)の導入状況
失効した年次有給休暇を積み立てて使用することができる制度(失効年休積立制度)を導入している企業について、人事院が調査したところ、少し古いデータ(平成28年)となりますが、以下のとおりとなりました。
出典:人事院「平成28年民間企業の勤務条件制度等調査結果の概要」
失効した年次有給休暇を積み立てて使用することができる制度がある企業は、正社員に制度がある企業が29.6%と3割弱、有期雇用従業員に制度がある企業が12.1%と1割超となっています。
表からは、企業規模が少なくなるにつれ、実施割合が減っていることが見てとれますが、現状として、制度を導入している企業はそれほど多くなく、導入余地のある制度と言えるでしょう。
積立休暇制度を導入するにあたり検討するべきポイント
積立休暇制度を導入するにあたり、就業規則に規定する必要があります。どういったことを規定する必要があるのでしょうか。主には、次の6点となります。
- 取得単位(全日、半日、時間単位など)
- 有効期限(期限を設けるかどうか)
- 年間積立日数の上限(1年間に何日分まで積み立てを認めるか?)
- 総積立日数の上限(累積していく年休に上限を設けるかどうか)
- 利用事由の制限(私傷病のみ? 育児や介護、看護も入れる? 自己啓発、ボランティアなどは?)
- ほかの休暇との取得優先順位(法定の年休から取得してもらう)
積立休暇制度は任意のものとなるため、導入する際には上述のポイントをよく検討することをおすすめします。
積立休暇制度の利用事由を拡充することで、さらに従業員のエンゲージメントUP
一般的に、積立休暇制度は“業務外”で発生した傷病(私傷病)の際に使われることが多いですが、育児や介護などでの利用を企業が認めると、社員は減給・欠勤の懸念なく、安心して休暇の取得を選択することができるようになります。
積立休暇制度の利用事由を拡充することで、社員の仕事と家庭の両立を支援し、働き方の多様性を高められる可能性もあります。従業員のエンゲージメント向上にもつながりますので、積立休暇をどういったケースで利用できるようにするか、幅広くご検討いただけたらと思います。
なお、積立休暇制度の導入は「魅力ある職場づくり推進奨励金(※都内中小企業が対象)」を申請できる取り組みの一つとなっています。本奨励金の対象となる企業は、奨励金の獲得を目指しながら制度導入を検討されてみてもいいかもしれませんね。
東京しごと財団「魅力ある職場づくり推進奨励金(※都内中小企業が対象)」
https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/joseikin/tokyoengagement.html
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過去記事はこちら第1回 最近ニュースでよく目にするワードの「人的資本経営」って?
第4回 リスキリングとともによく出てくるワードの「DX」とは?
第5回 「DX人材」の育成について:人材確保・育成に向けた対応策
第6回 DX人材の育成:専門実践教育訓練を受けている(リスキリングしている)従業員に対して企業ができるサポートとは
第7回 教育訓練休暇等を付与した際に受けられる人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース)
第8回 リスキリングをすると“従業員エンゲージメント”が上がる⁉「エンゲージメント」とは
第9回 従業員のエンゲージメントが高まる魅力のある職場環境づくりとは?具体的な取り組み事例15
第10回 従業員のエンゲージメントUP取り組みの一つ「選択的週休3日制」について
第11回 優秀な人材の確保・定着を図れる!「多様な正社員制度」について
第12回 「特別休暇」を導入して従業員エンゲージメントUP!助成金獲得の可能性も