フレックスタイム制では、始業時刻、終業時刻は労働者の自由な意思決定にゆだねることから、清算期間の総労働時間を満たしている限り、遅刻・早退・欠勤の概念はないように感じます。たしかに、通常のフレックスタイム制では、始業時刻等を労働者自身が決定しますので、何時までに出社しないと遅刻、何時より前に退社したら早退ということは、清算期間の総労働時間を満たしている限り、あり得ないのです。 しかし、フレックスタイム制であっても、「コアタイム」を設けた場合は、話は別です。「コアタイム」とは、「必ず出勤していないといけない時間帯」のことです。この「コアタイム」に遅刻・早退、欠勤があっても、清算期間の総労働時間を満たしている限り、何の取り扱いもしないとなると、「コアタイム」を設定した意味がありません。 そこで、コアタイムに遅刻・早退、欠勤をした場合には、以下のような方法で取り扱うことが可能です。
1.就業規則の制裁規定に基づいて、コアタイムに遅刻または早退したときは減給の制裁をする。
2.清算期間中は、遅刻・早退・欠勤等の扱いをせず、賞与で減給の制裁または勤怠査定をする。
3.コアタイムに遅刻・早退等をしなかった者に対して精皆勤手当を支給するようにし、コアタイムに遅刻・早退等があった場合には、精皆勤手当を支給しない。
以上のような方法で、コアタイムに遅刻等をした場合のペナルティを課し、または防止することができます。ただし、注意点として、
1.の減給の制裁については、1回の事案について、平均賃金の1日分を超え、総額が一賃金支払期の賃金の10分の1を超えてはなりません。(労働基準法第91条)
2.の賞与で減給の制裁をする場合も、上記と同様、制裁の事由が複数回に及んだとしても、減給の合計額が賞与総額の10分の1を超えてはなりません。(S63基発150号)
3.の精皆勤手当については、遅刻・早退、欠勤が一定回数以下の場合に支給する手当です。フレックスタイム制での精皆勤手当は、コアタイムに対する遅刻・早退、欠勤の有無だけが、支給、不支給の理由となります。そのため、就業規則または労使協定でその旨を明確にする必要があります。
コアタイムを定めたのに、遅刻、早退等のペナルティがなければ、実質、コアタイムのないフレックスタイム制となります。 その結果、出勤して欲しい時間帯に遅刻、早退等が横行してしまい、会社の秩序が乱れてしまうこともあります。 そのためにも、コアタイムに遅刻、早退、欠勤等があった場合には、ペナルティを課すのが望ましいです。 <社会保険労務士 PSR正会員 松田 将紀>