今年の10月から、健康保険・厚生年金保険の被保険者資格の要件のうち、勤務期間要件(2か月要件)が見直されたことをご存じですか?
これまで、「2か月以内の期間を定めて使用される者」は適用除外とされ、その後「所定の期間を超え、引き続き使用されるに至った場合」には、その時点から被保険者資格を取得することとし、最初の雇用契約の期間は適用除外とする取扱いとされていました。
しかし、より雇用の実態に即した健康保険・厚生年金保険の適切な適用を図る観点から、「2か月以内の期間を定めて使用される者」について、「当該定めた期間を超えて使用されることが見込まれないもの」との要件を追加し、契約の更新等により、実際には最初の雇用契約の期間を超えて継続して使用されることが見込まれる場合は、最初の雇用契約の期間から被保険者資格を取得するように改正されました。
また、社会保険の適用拡大の対象となる特定適用事業所に使用される短時間労働者については、「継続して1年以上使用されることが見込まれない者」は適用除外とされ、継続して1年以上使用されることが見込まれることが、被保険者資格を取得するための要件の一つとされていました。
しかし、今回の改正にあわせて、この要件を削除し、結果的に、通常の労働者と同様の期間要件を適用することとされました。
整理すると、次のとおりです。
<被保険者資格の勤務期間(使用期間)の要件/改正前後の取り扱い>
[改正前]
・短時間労働者:継続して1年以上使用されることが見込まれない者は適用除外
→継続して1年以上使用されることが見込まれる場合は要件に該当
・通常の労働者:2か月以内の期間を定めて使用される者は適用除外
→ただし、契約更新などでその定めた期間を超えた場合は、その超えたときから適用(他の要件を満たしていれば、被保険者資格を取得)
[改正後]
・短時間労働者・通常の労働者に共通:2か月以内で定めた期間(1か月、2か月など)を超えて使用されることが見込まれない者は適用除外
→その定めた期間を超えて使用されることが見込まれる場合(2か月以内の雇用契約が更新されることが見込まれる場合)は、当初から適用
ここで重要となるのは、「2か月以内の雇用契約が更新されることが見込まれる場合」とは、どのような場合をいうのか? ということです。
これには、次の(1)(2)のいずれかのような場合が該当することとされています。
(1)就業規則や雇用契約書その他の書面において、その雇用契約が「更新される旨」または「更新される場合がある旨」が明示されている場合
(2)同一の事業所において、同様の雇用契約に基づき使用されている者が、契約更新等により最初の雇用契約の期間を超えて使用された実績がある場合
<豆知識>
上記の(1)または(2)に該当する場合でも、2か月以内で定められた最初の雇用契約の期間を超えて使用しないことについて労使双方が合意しているときは、「2か月以内の雇用契約が更新されることが見込まれる場合」には該当しないこととして取り扱うことになっています。
上記(2)のような場合でも、
「2か月以内の雇用契約が更新されることが見込まれる」こととされるので、当該契約を更新しない予定の労働者については、上記豆知識として紹介した「労使双方の合意」をしておいたほうがよいでしょう。
その場合、その合意は、「書面による合意(メールによる合意も含む。)」であることが必要とされています(口約束ではダメ)。
※特に短時間労働者については、勤務期間(使用期間)の要件が大きく変わります。
たとえ有期雇用であっても、できる限り健康保険・厚生年金保険を適用しようとする見直しが行われていますので、注意しましょう。
〔参考〕年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する
法律の施行(令和4年10月施行分)に伴う事務の取扱いに関するQ&A集の送付について
≫ https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T220914S0030.pdf