1.社会保険料
ア.労基法の考え方
労働者が法律上当然に支払う義務のある社会保険料なので、事業主が負担した部分は賃金とみなされます。
(昭63.3.14 基発150号 婦発47号)
イ.雇用保険法・徴収法
労働者負担分を労働協約等の定めにより負担した場合は、その負担額が賃金となります。
保険料の算定が複雑になるときは、労働者に支給された額+事業主が負担した社会保険料の額が保険料算定の
額としてもいいことになっています。(昭51.3.31 労徴発12号)
ウ.健康保険法・厚生年金保険法
「名称の如何を問わず、就業規則、労働協約に基づき、その支払い事由発生後
引き続き支給されるものは報酬に該当する」(昭25.2.22 保分発376号) の通達から、報酬とされます。
健康保険制度は相互扶助の精神に基づいており、勤労者の生活の安定を目的とする制度の ため、社会保険料を全額事業主負担することは認めていません。
2.生命保険料
ア.労基法の考え方
労働者への生命保険料補助金は労働者の福利厚生のためのものだから、使用者が負担しても賃金と認めていません。
(昭63.3.14 基発150号 婦発47号)
イ.雇用保険法・徴収法
労働者の退職後の生活や在職中の死亡保障のために、事業主が労働者を被保険者とした生命保険の契約をして会社が保険料を全額負担した場合は、賃金として認めていません。(昭30.3.31 基発収1239号)
ウ.健康保険法・厚生年金法
団体養老生命保険等の契約から従業員は利益を得るとしても、労働協約、給与規定等に一切規定されず、事業主の恩恵的に加入している場合は、生命保険料は報酬に含まれません。 団体養老保険等の保険料の事業主負担分について、労働協約、給与規定等に規定しており、 労働者側に完全に権利が移っているような場合は、報酬に含まれます。
労働者負担分の社会保険料を事業主が負担する場合は、労働協約等で定めておくと混乱し ないでしょう。団体養老保険等の生命保険料の場合は、労働協約等の定め方で報酬になる 場合もあります。どちらも、労働協約等が重要となります。
〈社会保険労務士 PSR正会員 小野 玲子〉