【専門家コラム】給与計算をアウトソーシングする際に押さえておくべき事項とは?メリットデメリットも解説

公開日:2024年5月15日

 

給与計算をアウトソーシングする際に押さえておくべき事項とは?

メリットデメリットも解説


<<社会保険労務士事務所Bricks&UK 代表 四宮寛子/PSR会員>

近年、給与計算担当者の退職や労務部門のリソース見直しをきっかけに、給与計算業務をアウトソーシングする企業が増えてきました。

しかし、給与計算を外部に委託する際には、事前に十分な検討を行う必要があります。

今回は、給与計算業務をアウトソーシングすることのメリットデメリットおよび、アウトソーシングを検討する際に押さえておくべき事項について解説します。

 

給与計算業務のアウトソーシングとは?

給与計算業務のアウトソーシングとは、自社で行っている給与計算業務を外部の給与計算代行会社や税理士、あるいは社会保険労務士等に委託することです。

委託先によってそれぞれ特色があり、給与計算代行会社の場合は、比較的人数の多い大企業に対応していることが多く、給与計算以外にも住民税の年度更新や年末調整業務、従業員の窓口対応もサポートするなど、幅広いサービスを展開しています。

一方税理士や社会保険労務士は、比較的小規模の企業を中心とし、顧問契約に付随して給与計算を行っているケースが多く、細やかな対応が受けられるのが特徴です。

 

アウトソーシングのメリット

給与計算業務をアウトソーシングすることには、主に次の3つのメリットがあります。

①自社の給与計算業務にかかる負担が減らせる

これまで給与計算業務を行ってきた担当者の業務の負担がアウトソーシングにより減り、時間外労働も短縮できます。

人件費が削減でき、また給与計算システムの契約料や保守料などが不要になるなど、コストダウンにつながります。

②給与情報を従業員に見られる心配がない

中小企業には、従業員に給与情報を開示していないケースも多くみられます。

給与計算そのものを外部委託すれば、社内で給与情報を取り扱う必要がなくなり、従業員への情報漏えいの心配がなくなります。

③給与計算業務の合理化、効率化ができる

委託先への業務移行時にこれまでの計算ルールや情報収集のあり方、業務フローを見直すことで、給与計算業務の合理化と効率化を実現できます。

そうなれば、将来再び内製化することになっても最小限のリソースで対応できるでしょう。

 

アウトソーシングのデメリット

給与計算業務をアウトソーシングすることには、次のようなデメリットもあります。

①コストの発生は避けられない

外部の代行会社等に委託する場合、業務委託料が発生します。委託する業務内容やその範囲によっては、現在の人件費以上のコストがかかることもあります。

②情報共有のハードルが上がる

社内で給与計算業務を行う場合、必要な情報はすべて社内にあるため、やり取りが容易で、不備があってもすぐに対応できます。

一方で、外部に委託する場合には、必要な資料をすべて期限までに提出しなければなりません。また、追加の情報共有も委託先のルールに従う必要があるため、スムーズに進まない恐れもあります。

 

アウトソーシングを検討する際に押さえておきたい事項

給与計算業務のアウトソーシングを検討する際には、委託先のサービスについて次の点をチェックしておきましょう。

①委託可能なサービスの範囲

給与計算業務のみ請け負う業者もあれば、勤怠チェックや勤怠集計、従業員対応、振込対応、住民税年度更新、年末調整や有給管理まで可能なところもあります。委託可能業務の具体的な範囲を確認しましょう。

仮に給与計算業務のみ可能な場合、勤怠管理や振込業務などは引き続き社内で対応しなければなりません。

②使用する給与計算システムの種類

委託先によって、給与計算業務に使用するシステムは異なります。システムが変われば、他のシステムとの連携に不具合が出る可能性があるので注意が必要です。たとえば、給与計算と会計処理を同じシステムで行っている場合、給与計算システムの変更により、会計のシステムにデータを連携できなくなる恐れがあります。

また、将来的な内製化の可能性を考えると、自社でも取り扱い可能な給与計算システムを選定すると安心です。

③情報セキュリティへの取り組み

近年、サイバー攻撃により給与計算システムがダウンするような事態も発生しています。

非常時のバックアップ体制や情報漏えい防止の対策など、委託先のセキュリティが万全かどうかを確認する必要があります。

④給与計算の業務設計の可否

給与計算のルールは会社ごとに異なるため、委託時には確実な引き継ぎが必須です。

必要な情報をまとめ、計算方法や手順をマニュアル化するなど、業務設計を確実に行ってくれるかどうかを確認しましょう。

⑤委託先の業務体制

給与計算は期限厳守であり、ミスも許されません。安定して稼働できる体制かどうかを確認しましょう。

具体的には、複数担当制か、情報連携がスムーズにできるかがポイントです。

給与計算のアウトソーシングを考えるなら、事前にしっかりと比較検討を行い、自社に合う業者あるいは専門家を選んでください。

 

プロフィール

四宮寛子 

特定社会保険労務士/医療労務コンサルタント

社会保険労務士事務所Bricks&UK(https://bricksuk-sr.biz/)代表 

大学卒業後、大手銀行関連会社にて給与計算、労働・社会保険手続きを担当。2006年社会保険労務士試験合格、翌年開業。中小企業の経営者に寄り添った労務顧問サービスを展開、助成金の申請にも力を入れている。近年は社労士業務の製販分離にも着手し、手続き業務や給与計算業務の生産管理システムを導入。業務の可視化を行い、誰でも業務に当たれるようにしている。著書に新日本法規「新しい働き方対応 会社経営の法務・労務・税務」共同執筆(2022年)がある。

 

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