【専門家の知恵】カスタマーハラスメント経験者が急増!?カスハラから従業員を守るための取り組みとは

公開日:2023年12月22日

カスタマーハラスメント経験者が急増!?

カスハラから従業員を守るための取り組みとは


<ひろたの杜 労務オフィス 代表 山口善広/PSR会員>

 

厚生労働省が実施した「令和2年度職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間に勤務先でカスタマーハラスメントを一度以上経験した人の割合は15%で、セクハラよりも割合が高いという結果が出ました。

カスタマーハラスメントを受けた従業員は、業務のパフォーマンスの低下を招くだけでなく、健康不良に陥る可能性が出てきます。

そうなると、企業にとっても時間や人材を失うことで、本来のパフォーマンスを発揮できなくなるリスクがあるのです。

企業がカスタマーハラスメントから従業員をどのように守れば良いのかをこれからお話させていただきます。

 

そもそも「カスタマーハラスメント」とは

カスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」と呼びます)とは、一言で言うと、顧客等からの著しい迷惑行為のことを言います。

顧客や取引先などからのクレームなどに端を発し、たとえばクレームそのものが不当なものであったり、クレームの言動に妥当性がないために、労働者の就業環境が害されるものを指します。

ただ、顧客などからのクレームのすべてがカスハラに該当するわけではありません。

企業の提供する商品やサービスに瑕疵や過失があれば企業は誠意を持って対応するべきものですし、顧客からの言動にも悪質性がなく、社会一般的に受け入れられるものであればカスハラには当たりません。

しかし、企業が提供する商品やサービスに瑕疵や過失がなかったり、顧客の要求の内容が商品やサービスの内容と関係がない、顧客の要求内容に妥当性がないのに企業に主張してくる場合は、カスハラに該当する可能性があります。

また、商品やサービスに瑕疵や過失があったとしても、殴る、蹴るといった身体的な攻撃や脅迫、土下座の要求など、言動が社会通念上、不相当な場合もカスハラに該当する可能性があります。

もし、顧客が暴力をふるって従業員を怪我させた場合などは、もちろん警察に通報して然るべき処置を取ることが必要となってきますが、カスハラを受けることにより、従業員の心身に悪影響を及ぼし、その後の業務に支障をきたすようなことがあれば、企業に取っても良いことはありません。

企業の人材を守るために行うべき措置にはどのようなものがあるのかご紹介しましょう。

 

従業員をカスハラ被害から守るための企業の取り組みとは

厚生労働省では、厚生労働省が定めるパワーハラスメントの防止に関する指針において、カスハラによって従業員の労働環境が害されないように、相談対応の体制の構築やカスハラ被害者への配慮などを行うことが望ましいとされています。

ちなみに、令和4年4月以降、パワハラにおいては中小企業にも雇用管理措置が義務化されていますが、カスハラについては、まだそこまでの取組みの強制はありません。

カスハラ対策の取組みとは、まず事業主がカスハラ対策の基本方針や姿勢を示し、従業員がカスハラを受けた際の相談対応者を決めておいてそれを周知します。

また、カスハラへの対応や方法をあらかじめ決めておき、従業員が対応できるよう教育しておくことになります。

具体的には、カスハラの相談があったときに、そのクレームの原因が商品やサービスの瑕疵や過失であるかどうかを判断します。

瑕疵や過失があれば謝罪のための対応に進みますが、瑕疵や過失があっても脅迫や土下座の要求など、社会通念上不相当なものであればカスハラとして対応していくことになります。(もちろん瑕疵や過失がないのに顧客が要求してくる場合もカスハラ対応となります)

企業がカスハラ対応をする上で大切なポイントは、被害者を1人にしないことです。

対応をする場合は、複数名で行い、状況を共有するなどの対策を講じることを検討しましょう。

クレームを主張している顧客に対応する際も、できれば1人で対応させず、状況に応じて上司が対応することも考慮されると良いと思われます。

また、起きた事例を特定の部署が吸い上げ、他の従業員へ同様の事例に対する対応策の情報を発信することで再発防止策にもなり得ますので、企業全体のカスハラ対応のスキルアップを意識するようにしましょう。

いかがでしょうか。

ハラスメントについては、セクハラに始まり、マタハラやパワハラなどこれまで多くのハラスメント対策に企業が向き合ってきたことと思います。

今度は社外からのハラスメント対策ということで対応が難しいかもしれませんが、何をどう始めたら良いか分からない場合は、まずは労務管理もプロであるお近くの社会保険労務士にご相談されてみてはいかがでしょうか。

 

<参考>

  • 厚生労働省「顧客等からの著しい迷惑行為(いわゆるカスタマーハラスメント)について」

   https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html

  • 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(PDF)

   https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf

 

プロフィール

社会保険労務士 山口善広

ひろたの杜 労務オフィス 代表(https://yoshismile.com/

営業や購買、総務などの業務を会社員として経験したのち、社会保険労務士の資格を取る。いくつかの社会保険労務士事務所に勤務したのち独立開業する。現在は、労働者や事業主からの労働相談を受けつつ、社労士試験の受験生の支援をしている。

 

 

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