平成22年5月21日付で、厚生労働省保険局保険課長から運営主体である国(政府)に対して、「自殺未遂による傷病に係る保険給付等について」という通知が出されました。 これは、従来の取扱いを改めて周知するために出されたもので、自殺・自殺未遂の増加を考慮したものといえます。
自殺未遂による傷病に係る保険給付等について
厚生労働省は、次の取扱いを、改めて周知しました。
健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、高齢者医療確保法では、故意に給付事由を生じさせた場合は、その給付事由についての保険給付等は行わないことと規定しているが、自殺未遂による傷病について、その傷病の発生が精神疾患等に起因するものと認められる場合は、「故意」に給付事由を生じさせたことに当たらず、保険給付等の対象とする。
今回、改めて周知されていませんが、自殺による死亡ついても、給付制限における「故意」には該当しないこととされています(国民年金法・厚生年金保険法においても同様)。 したがって、残された遺族等に対しては、埋葬料や遺族年金が支給されます。 また、自殺が、業務による心理的負荷に起因するものであるときには、労災保険法の保険給付の対象となります。 ☆自殺や自殺未遂はあってはならない事故ですが、万が一起こってしまった場合には、社会保険や労災保険の保護の対象となることを確認しておきましょう☆
わが国における自殺死亡者数は平成9年まで2万5千人前後で推移していましたが、平成10年に突然3万人を超え、以降もその水準で推移しています。 平成18年10月には「自殺対策基本法」が成立し、自殺対策の総合的な推進が国家的課題とされました。現在、自殺対策基本法及び政府が推進すべき自殺対策の指針である「自殺総合対策大綱」(閣議決定)、さらに自殺総合対策会議において決定された「自殺対策加速化プラン」に基づき、自殺対策の一層の推進が図られています。
このプランでは、「情報提供体制の充実」、「職場におけるメンタルヘルス対策の推進」、「地域における心の健康づくり推進体制の整備」、「危険な場所、薬品等の規制」等のほか、自殺未遂者の再度の自殺を防ぐ観点から「救急医療施設における精神科医による診療体制等の充実」、のこされた人の苦痛を和らげる観点から「自殺者の遺族のための自助グループの運営支援」といった施策も、推進していくこととされています。