【専門家の知恵】職場でパワハラ勃発!そのときあなたはどうする!?

公開日:2019年3月19日

職場でパワハラ勃発!そのときあなたはどうする!?

<松田社労士事務所 松田 法子/PSR会員>

 

 パワハラ防止に向けた具体的措置の実施が、法律で企業に義務付けられる見込みだ。セクハラ等と同じような対応が必要になってくるが、実効性の向上を目指し、各企業においては、今後さまざま様々な取り組みが必要になるといえる 。

 

◆パワハラ防止に向け具体的措置の実施が義務化へ

 昨今、パワーハラスメント(パワハラ)に関する報道を目にする機会が増えている。厚生労働省の「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」においても、職場の「いじめ・嫌がらせ」の相談件数は年々増加し、全ての相談の中で6年連続トップとなっている 。また、嫌がらせ、いじめ、暴行等を受けたことによる精神障害の労災認定件数も増加傾向にある。

 パワハラ問題の増加を受け、厚生労働省は、企業に対し、職場におけるパワハラ防止措置をとることを法律で義務化する方針を固めた。今年の通常国会に関連法案の提出を目指している 。

 現在、セクシュアルハラスメント(セクハラ)や妊娠・出産した女性へのマタニティーハラスメント(マタハラ)については、男女雇用機会均等法で企業に防止措置が課されている。今後企業には、パワハラについても、セクハラ・マタハラと同様の措置が求められる。

 しかし、都道府県労働局に対するセクハラに関する相談件数は約7千件(平成29年度)といまだ高水準に留まっていることから、こう いった措置だけでなく、各企業の諸事情に合わせ、一層の実効性の向上を目指す取り組みが必要だといえる。

筆者は、社会保険労務士として、実際にパワハラ問題が起きている現場へ足を運ぶことがある。するとそこは、何とも言えない重たい空気に包まれている。

 離職者が相次ぎ、残された人に仕事の負荷がかかり、職場の雰囲気の悪さに拍車がかかる。何とか改善を、と個別の対応や、方針の策定、研修などの手段を用いて、経営者と一緒に改善に取り組んでいる。

 こうした過程を経て思うのは、一番大事なのは、経営者が腹をくくるということだ。経営者の決意が伝わると、徐々に空気が変わってくる。

 こう書けば簡単なようだが、実際、当事者である経営者にとっては、関わりたくない、面倒、恐いといったいろいろな感情があるようだ。人間なのである程度は仕方がない。しかしそういった時、社会保険労務士など、一緒に対応にあたれる専門家がいたら心強いかも知れない。

 

◆パワハラは当事者だけではなく職場全体の問題であると認識せよ

 パワハラで心を病んでしまった被害者の話を聞く機会があるが、そうした人たちは、加害者だけでなく、対応してくれなかった会社や、見て見ぬふりの職場の同僚に対してのやるせない思いを吐露する ことが多い。職場であるまじき行為が行われているのに、皆、見て見ぬふり、というのは、実際多くの現場であるのではないだろうか。

 某元アイドルの自動車事故の際、目撃者である通行人が、被害者を助ける様子もなく素通りしていたことに批判の声があった。これは心理学では「傍観者効果」というそうだ。

 傍観者効果が生じる原因としては、「責任の分散:自分がしなくても誰かが行動するだろうと思う」、「評価懸念:自分が積極的に行動したことで周囲から否定的に見られることを恐れる」、「多元的無知:周囲の人が何もしていないのだから、援助や介入に緊急性を要しないだろうと思う」といったことが考えられるそうだ。

 「平成28年度職場のパワーハラスメントに関する実態調査」の結果によれば、パワハラを受けたと感じた者が、「何もしなかった」と回答した比率は40.9%であり、その 理由として「何をしても解決にならないと思ったから」と回答した比率が高い。

 パワハラ防止措置として相談窓口の設置が挙げられているが、中小企業においては、中核人材がパワハラの加害者となっているケースもある。よって、相談しやすさという点で考えれば、外部相談窓口の設置が有効だと考えられる。

 職場のパワハラが、職場全体の生産性や意欲の低下など、経営上大きな損失につながることをしっかり認識すれば、問題が起きたときに誰でもすぐに相談できる環境づくりはまさに不可欠 である。

 パワハラの問題は、加害者と被害者の対応を中心に考えてしまいがちだが、それを「傍観」している周囲の環境も問題と言える。パワハラが起きた時に、他人事ではなく、「当事者意識」を 持って対応できる職場にしておかなければならない。

 

プロフィール

特定社会保険労務士、産業カウンセラー 松田 法子
松田社労士事務所(http://www.matsuda-syaroushi.com/)代表
労使双方が幸せを感じる企業造りに貢献できるよう社会保険労務士として日々研鑽を重ねております。
 

 

 

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