パワハラと“嫉妬”
<社会保険労務士たきもと事務所 瀧本 旭/PSR会員>
◆はじめに
日本レスリング協会のパワーハラスメント(以下、パワハラ)問題が世間を賑わせた。
もちろん当事者にしかわからないことばかりだが、報道によると選手や後任のコーチに対する「嫉妬」が原因の一つではないか。
企業においても、パワハラ(パワハラに限らず、ハラスメント行為すべて)は大きな問題になっている。以下、職場のパワハラの原因になりうる「嫉妬」について検討してみたい。
◆パワハラの定義
改めてパワハラを定義すると、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」をいう。
パワハラが起こる原因は様々であり一概には言えない。パワハラ(と言われるまでにある行為)を助長する要素として、「欲求不満状態」と「背景となる体験」であると言われている。
◆嫉妬と欲求不満の関係
マズローによると、人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されている。(「マズローの欲求5段階説」下図参照)
嫉妬が欲求不満から発生・助長されると考えると、「承認欲求」「所属欲求」との関連性が高いことがわかる。
◆欲求不満の背景
感情(嫉妬)には過去の体験やプライベートも無関係ではないだろう。例えば、下記のような過去の体験もパワハラのきっかけ・助長原因になるかもしれない。
・怒鳴られた、暴力を受けた
・他人から怒られたことがない
・人から否定されたことがない
・家族関係が冷え切っている
◆予防策
上記のような仮説をとると、パワハラの発生要素である感情のケアが大切であると言えそうだ。
欲求不満(特に承認欲求と所属欲求)を満たすために「チームビルディング」等の活動(褒め合う社内文化の醸成、飲み会や社内運動会の実施等)、あるいは過去の体験と向き合うためのメンタルトレーニングやカウンセリングなどを実施することもいいかもしれない。
いずれにせよ、社員の感情的不満を解消する仕組みを作ることは、パワハラ予防の取り組みの一つとなるだろう。
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