【専門家の知恵】欠勤・休職の17倍以上!会社に来ているのに働いていない社員による損失とは?

公開日:2018年1月31日

欠勤・休職の17倍以上!会社に来ているのに働いていない社員による損失とは?

<Office CPSR(オフィス シーピーエスアール)臨床心理士・社労士事務所 植田 健太/PSR会員>

 

 職場のメンタルヘルス、企業の健康経営を考える上で、「アブセンティーイズム」「プレゼンティーイズム」という概念が注目されている。

 アブセンティーイズムとは、病気や体調不良などにより欠勤や休職、あるいは遅刻早退など、業務に就けない状態のことをいう。一方、プレゼンティーイズムとは、「出勤しているにも関わらず、疾病等の問題により業務能力や生産性が低下している状態」をさす言葉である。

 従来、企業における従業員の健康に関連するコストというと、医療費対策や医療費ばかりに目が向けられてきた。また、最近ではうつ病などの疾患による休職者が増加しており、アブセンティーイズムによる損失も問題視されている。

 しかし、経済産業省平成27年度健康寿命延伸産業創出推進事業「健康経営評価指標の策定・活用事業」東大WGの成果報告書によると、企業における健康関連コストの中で最も大きな割合を占めているのは、「出勤はしているけれど何らかの健康問題によって生産性が低下しているために生じる損失」つまりプレゼンティーイズムによる損失が最大のコスト要因となっているという結果が報告されている。以下のグラフを見ると、その割合は、77.9%。アブセンティーイズムによる損失の17倍以上なのである。

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 さらに、プレゼンティーイズムにもっとも相関しているのは生物学的リスク(各種健診の値など)や生活習慣ではなく、主観的健康感とかストレスといった心理的リスクだということも分かった。プレゼンティーイズムの発生を抑えるためにも、企業のメンタルヘルス対策は必要不可欠となってくるのだ。

 また、プレゼンティーイズムがより深刻なのは、それが周囲に影響を与えるからである。
ただの風邪気味な状態であっても、無理に出社すれば職場のほかのメンバーにうつしてしまう恐れがあり、また、何かだるく集中できない状態で出社すれば、周りに悪影響を及ぼす。そうなれば、組織全体のパフォーマンスに支障を来しかねない。
さらに、無理に出社を続けて症状が悪化すれば入院や長期欠勤といった事態に陥り、医療コストがかさむ恐れがある。

 とはいえ、日本人にとって「勤勉は美徳」であり、多少の風邪気味やだるさなら体調不良を押して出社するという人は、決して珍しくない。欠勤・休職=アブセンティーイズムは日常の職場生活の中でさほど頻繁に起きることではないが、プレゼンティーイズムは日頃からあたりまえのように発生している。

 企業の生産性の向上のためには、アブセンティーイズムだけでなく、プレゼンティーイズムという目に見えにくい損失をいかに抑えるか――企業と社員双方の意識改革が大きな課題となりそうだ。

 そして最も大切なのは、アブセンティーイズムでもプレゼンティーイズムでもない人、すなわち生産性高く頑張っている社員がきちんと評価される制度設計が必要であるといえる。

 

プロフィール

こころと法律の専門家 代表 日本唯一の臨床心理士・社労士事務所代表 植田 健太
Office CPSR(オフィス シーピーエスアール)臨床心理士・社労士事務所(http://cp-sr.com)代表
日本で唯一男性で臨床心理士・社労士を保有しております。企業のメンタルヘルス対策に特化しております。事務所理念は「頑張る人がより頑張れる環境作り」です。 

 

 

 

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