一般の人の感じ方より過敏だ、というレッテルを貼ることは良い対応とは言えません。 同じ言葉であっても、相手との信頼関係、聞き手の状況、話すタイミング等によっても相手に与える印象は違ってくるようです。「軽い冗談だったから」「悪気がなかったから」というのは話し手の一方的な都合であって、どんな言葉であっても状況によっては人を傷つける可能性をはらんでいるのだということを意識する必要があります。
今まで誰も苦情を申し立てなかったからその状況が適切だったか、と言えば必ずしもそうではない場合もあるでしょう。環境に慣れてしまって、たまたま今まで問題にする人がいなかっただけ、もしくは誰かが我慢していただけ、なのかもしれません。苦情を、リスクマネージメントのチャンスとして前向きに捉えて下さい。
言葉が原因で裁判に至った例は・・・・・
例1 市議会棟内で男性議員が女性議員に「男いらずの○○さん」と呼びかけたことその他がセクハラに該当するかどうかで争われた →該当するとして発言者に40万円の慰謝料の支払いが命じられた (松戸市議会議員事件 千葉地裁松戸支 平成12.8.10判決)
例2 自らの性体験を話したり、「おばさん」「子持ちのババア」といった発言がセクハラに該当するかどうかで争われた →該当するとして発言者に80万円の慰謝料の支払いが命じられた (千葉A設計会社事件 千葉地裁 平成11.1.18判決)
最近は男性社員から「女性の冗談がきつい」「先輩からの性的なからかいに傷つく」という相談を受けることも増えてきました。 セクシュアル・ハラスメントの問題を考える場合、私たちはそれに該当する行為かどうか、○×式に考えてしまいがちですが、研修などの防止活動を通じて、相手を思いやる気持ち、相手の心をおしはかる想像力を大切にする職場風土を作っていくことが何より重要なことだと思います。社員一人一人がお互いの人格を認めて尊重し合うことのできる雰囲気が、強い組織を生み出す源です。 <社会保険労務士 PSR正会員 福田 和子>