[経営人事改革の視点]人の数だけ違う風景がある
<株式会社ビジネスリンク 代表取締役 西川幸孝>
いじめの本質と企業内ハラスメント
人の悩みの多くは人間関係に関するものです。
人間は進化の過程において集団で生きることを選択し、それによって過酷な環境を生き抜いてきました。
集団から排除されることは死を意味したので、本能のジャッジとしては「排除=死」であり、学校でいじめにあった子供が、ときに自死という悲惨な結末に至ることすらあるのも、こうした心の動きが大きく影響を及ぼしています。
ところが、いじめの根絶は非常に難しい。その理由は、いじめがそれを行う人間にある種の快感をもたらすからだと言われています。
狩猟採集の時代に集団で生き残るためには、集団のルールを守らない者やフリーライダーに対して制裁を加えたり排除したりする必要がありました。
しかし、そうした攻撃を行えば反撃を受けてダメージを負うリスクもあるので、危険を犯してもそれを遂行するだけの動機づけが必要となります。
そこで、排除すべき個体への攻撃、制裁などを行うことで脳内快感物質が放出されるというメカニズムが人間に備わったと考えられています。
つまり、いじめにはある種の快感が伴い、それが内発的な動機となるため根絶は難しいということなのです。
企業のハラスメントも学校のいじめと同じ側面があります。ただ、大きく違うのは企業では、社員に対して業務を遂行するための指導や教育が必要であり、ルールを守らないことに対して、時には制裁を行う必要があるという点です。
一方最近では、明らかに必要な業務指導の範囲の行為に対しても、ハラスメントであると主張されるケースが増加しているという現実があります。
他者から見える風景
プロフィール
西川幸孝
株式会社ビジネスリンク 代表取締役
経営人事コンサルタント 中小企業診断士 特定社会保険労務士
愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、商工会議所にて経営指導員、第3セクターの設立運営など担当。2000年経営コンサルタントとして独立。2005年株式会社ビジネスリンク設立、代表取締役。2009年~2018年中京大学大学院ビジネス・イノベーション研究科客員教授。「人」の観点から経営を見直し、「経営」視点から人事を考える経営人事コンサルティングに取り組んでいる。上場企業等の社外取締役も務める。日本行動分析学会会員