【専門家コラム】社内のパワハラへの対応は早すぎても遅すぎても企業にリスクあり!その対処法とは?

公開日:2024年8月29日

 

社内のパワハラへの対応は早すぎても遅すぎても企業にリスクあり!その対処法とは?


<ひろたの杜 労務オフィス 代表 山口善広/PSR会員>

 

パワハラに関する対応については、労働施策総合推進法(以下、「パワハラ防止法」と呼ぶ)により企業は、雇用管理措置義務と呼ばれる対応をしていく必要があります。

しかし、パワハラに関する対応のまずさから訴訟に発展するケースも少なくありません。企業はどのように対応していくべきなのかをお話しいたします。

 

企業はパワハラに対してどのような対応をしなければならないのか

まず、就業規則等により企業は、どういった行為がパワハラに該当するのか、そしてパワハラを行ってはならないという方針を明確にし、職場内でのパワハラを許さないという姿勢を示す必要があります。

それを従業員に周知をすることで、企業のパワハラに対する姿勢を理解してもらい、相談窓口を設置し、パワハラに関する相談の受け入れ態勢を整備します。

もし、従業員からパワハラに関する相談があった場合は、事実関係を迅速かつ正確に調査をしていくことになりますが、調査の結果、パワハラの事実が判明しなかったとしても、再発防止策を講じるところまでの措置を求められることになっています。

万が一、パワハラの事実が確認できた場合は、行為者と被害者を引き離す措置を講じるなどの配慮をすると同時に、行為者に対しては、就業規則に則った処分を検討することになります。

ここで大切なことは、パワハラへの対応が早すぎても遅すぎても企業にリスクが生じることを知っておく必要があるのです。

それは一体どういうことなのでしょうか。

 

パワハラへの対応が早すぎても遅すぎてもダメ!?

パワハラへの対応については、慎重に行う必要があるところ、拙速な対応をしてしまうと、行為者とされる従業員からの訴訟リスクが生じるのです。

たとえば、企業は、従業員に対して安全配慮義務(労働契約法第5条)がありますから、パワハラの行為者を職場から排除する目的で解雇を通告することがあります。

行為者の立場からしてみると、自分がパワハラを行ったという自覚がなかった場合、不当解雇であると主張する可能性があるのです。

したがって、パワハラの調査を行う段階では、行為者とされる従業員の言い分もきちんと聞く機会を設けることが大切です。

次に、行為者の言動がパワハラであったかどうかの判断をするわけですが、仮にパワハラと認められなかったとしても、行為者の言動が受取側によってはパワハラであると認識される可能性があるのだ、ということを行為者に対して指導することが重要です。

一方、行為者の言動がパワハラであると認定した場合は、就業規則に則った懲戒処分を検討する段階に入りますが、いきなり重い処分を行為者に課すことは行為者の反発を招く可能性がありますので、戒告や訓告などの処分から検討することになるでしょう。

それでもなお、行為者に反省の色が見られず、同じことを繰り返すようであれば重い処分へ移行していくことになると思われます。

なので、パワハラ行為者に対しては、拙速に動かないよう慎重に対応するようにしましょう。

とはいっても、あまりに慎重な対応は被害者の不満や不安を募らせることになります。

パワハラの相談があった場合、パワハラ防止法では迅速かつ適切な対応が求められています。

これは、先ほども述べましたが、企業には従業員に対する安全配慮義務があるからです。

パワハラの調査や認定に時間をかけすぎると、今度は被害者から訴訟を起こされる可能性が出てくるのです。

実際に、調査の結論を回答するまでに8ヶ月余りが経過していたのは安全配慮義務を負っている企業側の債務不履行であると判断され、損害賠償の支払を企業に命じた判例もあります。

被害者の立場からしてみれば、企業がどのように判断をするのか早く判断してほしいはずです。

もし、事案が複雑でどうしても時間が必要な場合は、経過を定期的に連絡するなどして、被害者の不安を和らげる対策を講じるべきでしょう。

いかがでしょうか。パワハラは人間関係に関わる問題ですので、行為者、被害者ともに「感情」が大きい要素を占めています。

企業としては、中立の立場でパワハラへの対応を進めていくことは大切であるとともに、行為者・被害者双方への配慮も、企業のリスク回避のための重要な課題となります。

したがって、企業だけで対応を進めていくのが難しい場合は、人事労務の専門家である社会保険労務士へご相談されてみてはいかがでしょうか。

 

プロフィール

社会保険労務士 山口善広

ひろたの杜 労務オフィス 代表(https://yoshismile.com/

営業や購買、総務などの業務を会社員として経験したのち、社会保険労務士の資格を取る。いくつかの社会保険労務士事務所に勤務したのち独立開業する。現在は、労働者や事業主からの労働相談を受けつつ、社労士試験の受験生の支援をしている。

もし、就業規則の整備やハラスメント防止の周知などでどのように取り組めばいいのか分からない場合は、お近くの社会保険労務士にご相談されることをお勧めいたします。

 

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