【専門家コラム】退職代行サービスで労働者から退職の連絡が来たら? 退職代行利用時の労働者と企業の注意点を解説

公開日:2024年11月6日

 

 

退職代行サービスで労働者から退職の連絡が来たら? 

退職代行利用時の労働者と企業の注意点を解説


<社会保険労務士法人  出口事務所 代表社員 出口裕美/PSR会員

 

「退職代行」等を耳にするようになったのは2018年頃ですが、最近またニュースやメディアなどで取り上げられるようになりました。

退職代行は、企業を辞めたいが自分では退職の意向を伝えられない、あるいは、引き留められるのが嫌といった労働者に代わり、退職の手続きを代行することです。

企業を辞めたいが、企業を辞められずに困っている方もいるのでしょう。

一方、退職代行を機に新たな労働問題が発生するおそれがあるのも事実です。退職代行にはメリットだけではなくデメリットもあります。

今回は、退職代行のポイントを解説いたします。

 

「退職代行」とは?

退職代行は、労働者に代わって退職の意思表示等を行うサービスです。その名の通り「退職」を「代わりに行う」ものです。

その際に送られてくる「退職届(例)」、退職代行のサービス内容の一例、退職代行のメリット・デメリットをまとめましたのでご参考ください。

資料1 退職届(例)
 
退職代行のサービス内容の一例
サービス内容 弁護士 労働組合 企業
退職の意思を伝える
退職届を代わりに提出する
窓口となり直接連絡させない 交渉は不可

退職に関する交渉

(例:退職日の調整、有給休暇の取得を伝える、残業代の請求など)
交渉は不可
企業からの損害賠償請求の訴訟対応 × ×
退職代行のメリット・デメリット
メリット デメリット

〇心理的負担なく辞められる場合もある 

〇退職手続きを一任できる場合もある

〇労働問題を解決できる場合もある

〇費用がかかる

〇労働問題が発生する場合もある  

 

【労働者編】退職代行を利用する際に労働者が注意すること

雇用契約に基づいた契約になりますが、一定の要件を満たせば、いつでも、理由を要せずに雇用契約を解約することができます(民法627条)。

ただし、企業は長く働いてもらうつもりで採用しています。企業を辞めるということは本人にとっても一大事ですが、企業にとっても一大事です。

企業や一緒に働いてきた仲間たちにもできる限り迷惑をかけないように、退職の手続きや引継ぎを進めてください。

資料2 退職願(例)

それでも、企業を辞めたいが、辞められずに困っている場合は、退職代行等に相談しましょう。

その際には、サービス内容、その場合にかかる費用などは、退職代行を依頼する前に、よく説明を求め、納得して依頼してください。

個別事情をしっかり伝えなければ、最適なサービスを受けることができず、円満な退職ができなくなるおそれがあるからです。

 

【企業編】退職代行から連絡がきた際に企業が注意すること

突然、資料1のような書類が届いた場合、企業としてどのように対応するべきでしょうか。

まず、労働者から退職したいという意向が示された場合、それが法的に何を意味するのかを確認しましょう。

具体的には、辞職と合意解約の申し込みの違いです。

辞職とは、労働者による雇用契約の解約です。

一定の要件を満たせば、いつでも、理由を要せずに雇用契約を解約することができます(民法627条)。

他方で、合意解約の申し込みとは、雇用契約を将来に向けて解約することについての申込みであり、企業が行うのが退職勧奨、労働者が行うのが依願退職です。

辞職も合意解約の申込みもどちらも意思表示であり、労働者の意思によるものでなければなりません。

例えば、労働者以外の者が、労働者に無断で、辞職の意思表示なり合意解約の申込みの意思表示をしたとしても、それは無効になります。

合意解約の申込みは、企業の承諾の意思表示がなされるまでの間は撤回できますが、辞職は、その意思表示が企業に到達した時点で解約告知としての効力を生じ、撤回できないとされています。

つまり、合意解約の申込みについては、新たな契約(雇用契約を解消しましょうという契約)の申込みなので、相手方がそれを承諾して初めて契約が締結されるので、承諾するまでは撤回できるということになります。

よって、退職願を承諾する場合は、承諾書にて通知しましょう。

資料3 承諾書(例)

 

資料1「退職届(例)」には、退職代行会社に連絡してくださいという趣旨の記載がありますが、企業からしてみれば、労働者本人が本当に退職代行会社に依頼をしたのかどうかも分かりませんので、注意が必要です。

一つの方法としては、退職者本人に対して、電話あるいはメール等で連絡し、退職の意思を確認するという方法があります。

その際は、退職を承認する旨も伝えておくとよいでしょう。
 
退職代行にかかわらず、これからも企業が注意することとしては、労働者とコミュニケーションをとることで、困っていることを早めに知ることが重要です。

また、交通事故や急病などにより、いつ誰かが突然業務ができなくなる可能性はありますので、業務を企業内で共有をすることを心がけてはいかがでしょうか。

 

プロフィール

出口裕美 
社会保険労務士法人  出口事務所(https://www.deguchi-office.com/
代表社員  特定社会保険労務士

2004年に社会保険労務士事務所を開業。出産を機に、育児と仕事の両立のためテレワーク(在宅勤務)を開始。2014年に社会保険労務士法人出口事務所に法人化。2017年にテレワーク(サテライトオフィス勤務)を開始。2020年に新型コロナウイルスの取り組みの様子をメディアにて紹介。
経営者と社員が継続的に安心して働ける環境を構築するため、インターンシップ、ダイバーシティ(雇用の多様化)、テレワーク、業務管理システム等を積極的に導入し、また企業への導入支援コンサルタントとしても活動中

 

 

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