カスタマーハラスメント対策と実務対応特集

社会問題化するカスタマーハラスメント
企業と従業員を守るための適切な対応とは

 

【最新記事】人事担当者が押さえておきたいカスタマーハラスメントの基本的な知識と対策のポイント >>>記事はこちら

 

近年、顧客等から暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為を受ける、いわゆるカスタマーハラスメント(カスハラ)が社会問題化しています。

厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和5年度)によると、過去3年間に各ハラスメントまたは不利益取り扱いに関する相談を取り扱った企業のうち、

  • 過去3年間にハラスメントに関する相談があったと回答した企業割合は、パワハラ64.2%、セクハラ39.5%、顧客等から著しい迷惑行為(カスハラ)27.9%
  • 過去3年間に相談があった事例のうち、企業がハラスメントに該当すると判断した事例の有無は、パワハラ73.0%、セクハラ80.9%、顧客等からの著しい迷惑行為(カスハラ)86.8%

と回答しており、決して放置できる問題ではありません。

直近では東京都の全国初「カスタマー・ハラスメント防止条例」が、令和6年10月4日、都議会本会議において全会一致で可決・成立し、令和7年4月1日から施行されます。

また、カスタマーハラスメントに対する方針を策定・社外に公表する企業も次々と出てきています。

現在、カスタマーハラスメントにおいては、「パワハラ防止指針(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)」によって、相談に応じ、適切に対応するための体制の整備や被害者への配慮の取り組みを行うことが望ましい、また被害を防止するための取り組みを行うことが有効である旨が定められています。

さらにここから踏み込んで、厚生労働省がカスハラ防止策を企業に義務付ける検討に入ったことが報道されました。

このように、企業に求められるようになってきたカスタマーハラスメント対策について、本特集では、予防策や体制づくり、カスハラ発生時の対応、再発防止などの取り組みに役立つ専門家コラム、研修コンテンツなどを順次掲載していきます。

 

カスハラ関連の最新トピックス NEW!

カスハラ関連の最新の動きは「ニュース・法改正」でもご確認いただけます。

カスハラの総合的な対策強化に向けた提言 事業主に対策を義務付ける法整備も(自民党)(公開日:2024年5月17日)

「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表 相談件数は、セクハラは減少・カスハラは増加・それ以外のハラスメントは変わらない(厚労省)(公開日:2024年5月20日)

「カスハラ」 厚労省の検討会が事例集を公表 同省委託事業の資料の修正については大臣がコメント(公開日:2024年6月25日)

カスハラの防止に向けた条例案 東京都が意見募集(公開日:2024年7月22日)

全国初のカスハラ防止条例 東京都で成立 令和7年4月施行(公開日:2024年10月9日)    NEW!

 

カスタマーハラスメントとは

企業の現場におけるカスタマーハラスメントの定義

 

顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの

 

※本来、顧客等からのクレーム・苦情は、商品・サービスや接客態度・システム等に対して不平・不満を訴えるもので、それ自体が問題とはいえず、業務改善や新たな商品・サービス開発につながるものである点には留意が必要です。

 

出典:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策マニュアル」

 

カスタマーハラスメントに該当する行為の例

 

  • 時間的拘束・・・1時間を超える長時間の拘束、居座り
  • リピート型・・・頻繁に来店し、その度にクレームを行う、複数部署にまたがる複数回のクレーム
  • 暴言・・・・・・大声での恫喝、罵声、暴言の繰り返し、店内で大きな声をあげて秩序を乱す
  • 脅迫・・・・・・脅迫的な言動、反社会的な言動
  • 権威型・・・・・優位な立場にいることを利用した暴言、特別扱いの要求
  • 正当な理由のない過度な要求・・・言いがかりによる金銭要求、契約内容を超えた、過剰な要求、難癖をつけたキャンセル料の未払い・代金の返金要求
  • セクハラ・・・・・特定の従業員へのつきまとい、従業員へのわいせつ行為や盗撮

 

出典:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策マニュアル」P9企業が悩む顧客等からの行為(一部抜粋)

 

カスタマーハラスメントの判断基準

厚生労働省「カスタマーハラスメント対策マニュアル」によると、業種・業態、企業文化などの違いから、カスタマーハラスメントの判断基準は企業ごとに違いがでてくる可能性があるとしながらも、下記の2つの観点で判断することが考えられる、としています。

①顧客等の要求内容に妥当性はあるか

顧客等の主張に対し、まずは事実関係、因果関係を確認し、自社に過失がないか、根拠のある要求がなされているかを確認し、顧客等の主張が妥当であるかどうかを判断する。

②要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当な範囲か

顧客等の要求内容の妥当性の確認と併せて、その要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当な範囲であるかを確認する。

なお、殴る・蹴るといった暴力行為は、直ちにカスタマハラスメントに該当すると判断できることはもとより、犯罪に該当するものである、としています。

 

人事担当者が押さえておきたいカスタマーハラスメントの基本的な知識と対策のポイント  NEW!

慎重な対応が求められるカスタマーハラスメント対策。会社としての基本的な対応基準を決めていく上で、カスハラと苦情(クレーム)の違い、どうカスハラ対応の準備を進めていくか、カスハラの法的視点など、人事担当者が知っておくべき基本的な知識とポイントを解説しています。

カスハラ対策の全体を押さえたい方はまずこちらからお読みください。

コラムはこちら


弁護士による実務解説:カスタマーハラスメントと企業の安全配慮義務

カスハラの判例から学ぶ「クレーム発生後の組織的対応力を強化するポイント」  NEW!

クレーム対応業務の負荷を軽減することは安全配慮義務の内容となります。安全配慮義務の履行は、うつ病などストレス関連疾患の発症を予防することでもあります。

さらに、組織的対応をすることにより、カスタマーハラスメントへの発展を防止するだけでなく、従業員のパフォーマンスやモチベーションが向上するといえます。

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カスハラの判例から考える「部下へのクレームに対し、管理職がとるべき行動」とは

顧客や取引先からのクレームは企業のコントロールの範囲外で起こるものであり、それだけでは直ちに使用者が安全配慮義務を負うわけではありません。

しかし、クレームにより労働者の就業環境が害されるに至った場合は、その変化に応じた安全配慮義務が発生します。そこで、判決を題材にクレーム発生時の対応方法を検証します。

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カスハラ・パワハラをめぐる精神障害の労災認定基準の改正と企業の留意点

厚生労働省「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(令和5年9月1日基発0901第2号)では、別表1「業務による心理的負荷評価表」において、具体的出来事「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスタマーハラスメント)や、心理的負荷の強度が「強」「中」「弱」となる具体例にパワーハラスメントの6類型すべての具体例が明記されています。

これは相談窓口での対応や従業員の教育など予防管理のツールとなり得るので、企業としては、補償面だけでなく、予防面においても活用を検討することが望ましいといえます。

本記事では、カスタマーハラスメントとパワーハラスメントに絞って認定基準と企業の留意点について解説します。

コラム本編はこちら

 

各専門家による実務解説:カスハラの現状とその影響

年々増加しているカスタマーハラスメント。その影響と対策方法とは

近年、カスタマーハラスメントの増加が注目されています。2020年にはカスタマーハラスメントに関する厚生労働省の指針が発表され、2022年には厚生労働省から「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」が公開されたように、国もカスタマーハラスメント対策に乗り出しています。実際にカスタマーハラスメントが増加している調査結果も出ており、その他のハラスメントと同様に企業は対応を考える必要があります。

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カスタマーハラスメント経験者が急増!?カスハラから従業員を守るための取り組みとは

カスタマーハラスメントを受けた従業員は、業務のパフォーマンスの低下を招くだけでなく、健康不良に陥る可能性が出てきます。そうなると、企業にとっても時間や人材を失うことで、本来のパフォーマンスを発揮できなくなるリスクがあるのです。企業はカスタマーハラスメントから従業員をどのように守ればよいのでしょうか。

コラム本編はこちら

 

各専門家による実務解説:カスハラから従業員を守るために

産業医が解説!カスタマーハラスメント対策は管理職の教育がカギになる

厚労省の職場ハラスメント調査では、パワハラ、セクハラ、カスハラのうち、カスハラのみが増加傾向にあり、またこのカスハラにより休職したり退職したりした人も無視できない人数がいるということが明らかになっています。

平成30年には裁判にもなっており、部下がカスハラを受けているにもかかわらず、上司がカスハラに適切に対応することなく、部下に対して顧客に謝罪するよう強いたことが問題になりました。

労働者が当該上司らに損害賠償を求め、裁判所はこれを認める判決を出しました。つまりカスハラは企業にとって決して座視できるものではないということです。

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顧客からハラスメントやクレームを受けた従業員を守るためのマネジメント

2020年6月1日に施行された「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」は、事業主に対し、パワーハラスメントに関する相談体制の整備や、その他の雇用管理上の必要な措置を講じることを義務づけました。

これに対し、他の事業主が雇用する労働者からのハラスメントや顧客からの迷惑行為(カスタマー・ハラスメント)については、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(2020年1月15日厚生労働省告示5号/「パワハラ防止指針」)に定められるにとどまりました。企業は、顧客や取引先といった関係先からハラスメントやクレームを受けたとき、どのように対応すればよいのでしょうか。

コラム本編はこちら

クレームの初期対応から体制づくりまで

DVD「カスタマー・ハラスメントから企業と従業員を守る!~顧客からクレームを受けたときの適切な対応とは~」

本DVDでは、「企業のブランド価値」「顧客との信頼関係」「従業員の健康」の3つを守る観点から、企業リスクとしてのクレームについて学ぶとともに、製品やサービス等に不満を持つ顧客が企業に接触する初期対応の段階から、損害賠償等の請求をするに至る段階まで、各時点における企業の適切な対応方法について、労働分野に強い弁護士がワークを交えて解説しています。

さらに、予防管理策として、クレーム解決だけでなく、顧客ロイヤルティ維持につなげるための体系的な取り組み「サービス・リカバリー・システム」の構築の仕方についても紹介しています。

厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」の内容もほぼカバーしている本DVD。御社のカスタマーハラスメント対策にぜひお役立てください。

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カスハラ防止に関するお役立ち情報

厚生労働省

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