退職金への課税の仕組みが改正されます

公開日:2021年12月2日

退職金への課税の仕組みが改正されますが、その内容を把握していますか?

そもそも、改正が行われることを知らない方のほうが多いかもしれませんが、
令和4年分以降の退職所得を対象として、その課税の仕組みの一部が変更されます。
 
まず、退職金への課税の仕組みの基本を紹介したうえで、改正のポイントをまとめてみます。

◆退職金への課税の仕組みの基本(源泉徴収税額の原則的な求め方)
退職金は、所定の計算方法により求めた「退職所得金額」が課税の対象となります。
・所得税…退職所得金額を「退職所得の源泉徴収税額の速算表」に当てはめて税額を算出
・地方税…退職所得金額×住民税率一律10%

この「退職所得金額」は、原則として、次のように計算します。
  (退職金の額-退職所得控除額)× 1/2

なお、役員等勤続年数が5年以下である人が、その役員等勤続年数に対応する
退職手当等として支払いを受けるもの(特定役員退職手当等)については、
「2分の1課税」を適用せず、次のように計算します。
  退職金の額-退職所得控除額


◆改正のポイント(一部の者の「退職所得金額」の計算方法を改正)
令和3年度の税制改正により、勤続年数が5年以下である者に対する退職手当等として
支払いを受けるもので、特定役員退職手当等に該当しないものは
「短期退職手当等」とされ、その「退職所得金額」については、
退職金の額から退職所得控除額を控除した残額が300万円を超える部分については、
「2分の1課税」を適用しないことになりました。

具体的には、次のように計算します。
<短期退職手当等についての「退職所得金額」>
・退職金の額-退職所得控除額 ≦ 300万円の場合
  →(退職金の額-退職所得控除額)×1/2
・退職金の額-退職所得控除額 > 300万円の場合
  →150万円(※1)+{退職金の額-(300万円+退職所得控除額)}(※2)
(※1)300万円以下の部分の退職所得金額
(※2) 300万円を超える部分の退職所得金額

なお、この改正は、令和4年1月1日以降に退職金を支払う退職が対象となります。

☆短期で多額の退職金が支給されるようなケースのみが対象となる改正となっています。
このようなケースは一般的とは言えませんが、2分の1課税の仕組みがある退職所得課税が
優遇された制度であるため、定年後の再雇用などで「給与を少なめに支給しておいて、
退職時に退職金として支払う」といった手法がとられることもあります。

そのようなケースにおいて、2分の1課税の恩恵を受けられる範囲を縮小するものなので、
合理的な改正であるという意見が多いようです。

レアケースに適用される改正といえますが、このような改正が行われたことは知っておきましょう。

なお、国税庁から、この改正に関するQ&Aが公表されています。
これを取り上げた記事のURLを紹介しておきます。
<短期退職手当等の退職所得金額の計算方法の改正(令和4年1月施行)についてQ&Aを公表(国税庁)>
≫ https://www.kaiketsu-j.com/index.php/topix/248-other/10029-4-1-q-a

 

 

「退職金・年金制度」関連記事

「賃金・評価制度の検討」に関するおすすめコンテンツ

ピックアップセミナー

オンライン 2024/11/27(水) /13:30~17:30

【オンライン】はじめての給与計算と社会保険の基礎セミナー

講師 : 社労士事務所Partner 所長 西本 佳子 氏

受講者累計5,000人超!2009年から実施している実務解説シリーズの人気セミナーです!
給与計算と社会保険について基礎からの解説と演習を組み合わせることで、初めての方でもすぐに実務に活用できるスキルが習得できます。

DVD・教育ツール

価格
31,900円(税込)

経験豊富な講師陣が、初心者に分かりやすく説明する、2024年版の年末調整のしかた実践セミナーDVDです。
はじめての方も、ベテランの方も、当セミナーで年末調整のポイントを演習を交えながら学習して12月の年末調整の頃には、重要な戦力に!

価格
6,600円(税込)

法律で求められることとなった介護に関する周知事項を網羅するとともに、個々人が最適な仕事と介護の両立体制をつくる上で必要な一通りの知識をまとめたのが本冊子です。
ぜひ、本冊子を介護制度の周知義務化対応としてだけでなく、介護離職防止策や介護両立支援策の一環としてご活用ください。

おすすめコンテンツ

TEST

CLOSE