退職金への課税の仕組みが改正されますが、その内容を把握していますか?
そもそも、改正が行われることを知らない方のほうが多いかもしれませんが、
令和4年分以降の退職所得を対象として、その課税の仕組みの一部が変更されます。
まず、退職金への課税の仕組みの基本を紹介したうえで、改正のポイントをまとめてみます。
◆退職金への課税の仕組みの基本(源泉徴収税額の原則的な求め方)
退職金は、所定の計算方法により求めた「退職所得金額」が課税の対象となります。
・所得税…退職所得金額を「退職所得の源泉徴収税額の速算表」に当てはめて税額を算出
・地方税…退職所得金額×住民税率一律10%
この「退職所得金額」は、原則として、次のように計算します。
(退職金の額-退職所得控除額)× 1/2
なお、役員等勤続年数が5年以下である人が、その役員等勤続年数に対応する
退職手当等として支払いを受けるもの(特定役員退職手当等)については、
「2分の1課税」を適用せず、次のように計算します。
退職金の額-退職所得控除額
◆改正のポイント(一部の者の「退職所得金額」の計算方法を改正)
令和3年度の税制改正により、勤続年数が5年以下である者に対する退職手当等として
支払いを受けるもので、特定役員退職手当等に該当しないものは
「短期退職手当等」とされ、その「退職所得金額」については、
退職金の額から退職所得控除額を控除した残額が300万円を超える部分については、
「2分の1課税」を適用しないことになりました。
具体的には、次のように計算します。
<短期退職手当等についての「退職所得金額」>
・退職金の額-退職所得控除額 ≦ 300万円の場合
→(退職金の額-退職所得控除額)×1/2
・退職金の額-退職所得控除額 > 300万円の場合
→150万円(※1)+{退職金の額-(300万円+退職所得控除額)}(※2)
(※1)300万円以下の部分の退職所得金額
(※2) 300万円を超える部分の退職所得金額
なお、この改正は、令和4年1月1日以降に退職金を支払う退職が対象となります。
☆短期で多額の退職金が支給されるようなケースのみが対象となる改正となっています。
このようなケースは一般的とは言えませんが、2分の1課税の仕組みがある退職所得課税が
優遇された制度であるため、定年後の再雇用などで「給与を少なめに支給しておいて、
退職時に退職金として支払う」といった手法がとられることもあります。
そのようなケースにおいて、2分の1課税の恩恵を受けられる範囲を縮小するものなので、
合理的な改正であるという意見が多いようです。
レアケースに適用される改正といえますが、このような改正が行われたことは知っておきましょう。
なお、国税庁から、この改正に関するQ&Aが公表されています。
これを取り上げた記事のURLを紹介しておきます。
<短期退職手当等の退職所得金額の計算方法の改正(令和4年1月施行)についてQ&Aを公表(国税庁)>
≫ https://www.kaiketsu-j.com/index.php/topix/248-other/10029-4-1-q-a