【専門家コラム】オフジョブ・クラフティングで余暇の過ごし方を工夫しよう

公開日:2024年4月1日

 

オフジョブ・クラフティングで余暇の過ごし方を工夫しよう


<合同会社DB-SeeD 代表社員 神田橋宏治>

 

ジョブ・クラフティングを知っておられている方は多いと思います。

ジョブ・クラフティングとは、自分の仕事について各人が①仕事のやり方への工夫、②周りの人への工夫、③考え方への工夫等を行うことによって労働生産性の上昇やワーク・エンゲージメント、労働者の健康につながるという考え方です。

一方、余暇の過ごし方を工夫する「オフジョブ・クラフティング」も効果があることがわかってきており、まさに現在研究が進んでいる分野です。今回はオフジョブ・クラフティングについてお話しします。

 

DRAMMAモデル

仕事のやり方を工夫するジョブ・クラフティングだけでなく、余暇の過ごし方を工夫するオフジョブ・クラフティングも良好な職業生活に有効であることが知られてきています。

中でも有名なのがDRAMMAモデルと呼ばれるものです。

これは、ウィリアム・アンド・メアリー大学の心理学者Newman氏が2010年代に提唱し始めたものです。

彼らはストレスから解放は、Detachment(仕事からの離脱)、Relaxation(リラックス)、Autonomy(自律)、Mastery(習熟)、Meaning(自分の価値観)、Affiliation(人間関係)の6つの要素から成り立っていると考えます。

仕事と非-仕事の間を明確にすること、これがDetachmentです。

コロナ禍に広がった在宅勤務では自宅が職場になるのでどうしてもこの区別があいまいになり、勤務時間が終わってもストレスが取れない方が極めて多くいらっしゃいました。

意識的に余暇の間は完全に仕事から離れるのがポイントです。

Relaxationとは心身ともに休息することです。例えば自然の中を散歩する、ゆっくりと風呂に入る、アロマなどをたくなどの行為がこれに当たります。

Autonomyは余暇を自律的に過ごすということです。

どのような余暇の過ごし方が自分にとって最も心地よいものかというのは人それぞれです。

例えばある人にとっては仲間と連れたってパーティーにいくのが楽しみかもしれません。

あるいは恋人とゆっくりドライブを楽しむのが好きな人もいるかもしれません。

このように自分の余暇の過ごし方を自分で決められるのがAutonomyです。

Masteryは新しいことへの挑戦や学んだりすること、あるいは自分が打ち込んでいる趣味が上達することで達成感を得られたり、他人から評価されたりすることが良い余暇の過ごし方につながるというものです。

サッカーやテニス、筋トレなど体に疲労感が溜まるものでも、例えば先週より重いバーベルを挙げられたことが達成感をもたらす、というような感じです。

Meaningはそれぞれの労働者が持つ価値観に沿った余暇を過ごすということです。

例えばボランティアのように他人のために時間を使うとか、家族サービスに勤めるとかです。

Affiliationとは、同じ余暇でも仲の良い人や一体感を感じられる人と過ごすことが大切であるということです。

 

オフジョブ・クラフティングのために会社ができること

実際これらの6つの要素がストレス軽減や仕事で燃え尽きることへの防止につながるという結果が、近年多くの研究で確かめられています。

労働者は自分の休日がこの6つの概念に沿ったものになっているか、つまり仕事から完全に離れられているか、十分に心身を休めているか、本当に余暇の使い方を自分で決められているかといったことを、たまに自問してみるのが良いでしょう。

また会社にもオフジョブ・クラフティングのためにやるべきことがあります。

とりわけ大事なのはDetachment、つまり終業時間を過ぎたら労働者を仕事から完全に切り離すということです。

例えば、就業時間外における仕事関係のメールや電話は、緊急の場合を除いて禁止する、労働者はそういったメールを読まない権利を有することを保障するといったことです。

この考えは「つながらない権利」としてフランスをはじめとしてEU諸国で広がりつつあります。

また、半ば強制的な上司主催のパーティといった、Autonomyを侵害するようなイベントの廃止も重要です。

労働者がよりよく働けるよう、人事部門や労務部門も労働者の余暇にきちんと目を向けましょう。

 

 

プロフィール

神田橋宏治
合同会社DB-SeeD(https://industrial.doctor.tokyo.jp/)代表社員
 
労働衛生コンサルタント、日本医師会認定産業医、建築物環境衛生管理技術者
1999年東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部附属病院助教などを経て、2011年4月から医療法人社団仁泉会としま昭和病院内科医として勤務。2015年に産業医事業を中心業務とする合同会社DB-SeeDを設立。2018年11月~現在 日本産業衛生学会代議員

 

 

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