<株式会社WBC&アソシエイツ 大曲 義典/PSR会員>
不確実性が高まりつつある現代社会において、組織に求められる役割も大きく変化している。ビジネス環境も技術もどんどん進化していくのに対し、組織自体が学習して変わっていかなくては、成長もおぼつかなくなってしまうだろう。そこで今回は、組織と業務の親和性について考察してみた。
◆「ピラミッド型組織」と「フラット型組織」
組織には「ピラミッド型」と「フラット型」があるのはよく知られている。「ピラミッド型組織」の特徴は、基本的に縦割りの階層構造となっている。こうした組織は、工場など作業手順が決まりきったルーティンワークを進めるのに適している。仕事は細分化され、階層の下部に位置する社員は、上司から指示された仕事を間違いなくやり遂げることが求められる。最も重視されるのは、「労働生産性の向上」と「品質管理」であり、失敗は最低限にとどめなければならない。
一方、「フラット型組織」は、状況が刻一刻と変化し将来が見通せない中で、変化に柔軟に対応できる組織とは?という問題意識から生まれた、チーム機能を最大限発揮させるための組織のことである。こうした組織は、部門・業種・職位などを超えてチームを編成し、相互に意見を闘わせながら特定のプロジェクトを成し遂げるのに向いている。
言い換えれば、「イノベーションを生み出す業務」に親和性が高いと言えよう。こうした職場では、効率性だけを追求しても意味がない。創造力を発揮するために、失敗を恐れず、挑戦し続けることが成功への鍵となる。
◆「ルーティン業務」と「プロジェクト業務」
このような組織の有り様は、どちらが一方的に良いという類のものではなく、自社の置かれた環境や各部門の特性によって使い分ける必要がある。
下図は、組織における「ルーティン業務」と「プロジェクト業務」の位置づけを表したもので、左側の「ルーティン業務」は、ある仕事をすれば一定の結果が得られることがはっきりわかっていて、そのための知識も組織内に十分に蓄積されている部門である。こうした職場では、「効率性」を追求するのが正しい行動となる。
それと真逆なのが、右側の「プロジェクト業務」である。新しいことにチャレンジすることに意義があるいるから、マニュアルなどはない。社員は結果が見通せない中で、試行錯誤を続けなければならない。こうした職場では、効率性を追求しても何の意味もない。かえって、挑戦し続けるための糧として、一見無駄とも思える「遊び」が必要なことも多かろう。
◆失敗してもよい部署と失敗してはいけない部署
「ルーティン業務」に携わる人たちは、トヨタ流に言えば「日々の改善(カイゼン)」を目標として働く。この部門では生産性の向上と品質管理が重要であるから、失敗は許されない。許されたとしても最小限にとどめなくてはならない。
一方で、「プロジェクト業務」に携わる人たちは、イノベーションを起こすことを目標に働く。創造性を発揮し、新しいソリューションを見つけて、技術を進化させていくことが仕事であるから、数多くの失敗を重ねていくことも必要である。
さらに、「ルーティン業務」と「プロジェクト業務」の中間に位置する業務(クロス業務)も存在する。現実には、効率を高めていかなければならない業務と、新しいことに挑戦しなくてはならない業務が混在している部門も多いからである。この部門に携わる人は、双方の業務を理解し、適宜使い分けながら問題を解決していかなければならない。見方によっては、一番難しい業務なのかもしれない。
◆リーダーや管理職に求められること
しかしながら、そもそも、リーダー層や管理職層の社員が、自らが属する部門の属性を果たして理解しているかどうかは疑わしい。失敗してもよい部門なのに、必要以上に失敗を恐れたり、失敗が許されない部門なのに、「これからの時代はフラットな組織を目指そう」などと的外れなことを言ってみたりする。
彼らに求められるのは、自分たちの業務の社内での位置づけの理解と、それに相応しい業務の進め方の理解だ。これが欠落している組織に限って、ハラスメントが起こったりもする。なぜなら、組織を構成する社員個々のベクトルがバラバラだからだ。
このようにならないため、最も必要なことは、トップリーダーが経営の道筋を具体的に示すことであり、組織目標や組織改革を社員に浸透させることである。そうすれば、社員は各組織でどのような働き方が求められているかを理解することができる。逆に、このような前提がないと、各社員は自分の得手不得手で勝手な働き方に終始してしまうだろう。
どの部門であっても、リーダーや管理職は組織目標を理解し、業務の質に応じた働き方を率先垂範していかなければならない。
プロフィール
株式会社WBC&アソシエイツ(併設:大曲義典 社会保険労務士事務所)