[経営人事改革の視点]
優良企業で組織的な不正がなぜ生まれるか?
<株式会社ビジネスリンク 代表取締役 西川幸孝>
行動を制御することは難しい
企業には達成すべき経営目標があり、その目標に向けて日々の企業活動が行われます。その企業活動をひも解いてみると、それは経営者・社員の行動の総合計であることがわかります。経営者、社員の行動には直接的な職務行動だけでなく意思決定も含まれますし、活動によってつくり込まれたルール、仕組み、ITを活用したシステムなども含まれます。
目標達成に向けて、企業活動を最適化していくのが経営ですが、それは経営者・社員の行動を最適化することにほかなりません。マネジメントの観点からいえば、「経営≒社員の行動の最適化」という図式になります。
さて、ここで本質的な問題が浮かび上がります。それは、他人の行動は思い通りにはならないという現実です。実は、自分自身の行動についても同様なのですが、それはさておき、企業集団における組織メンバーの行動をどのようにマネジメントしていくかが最も難しく、そして重要な課題であるということです。
人間の行動は、理性に基づいて起こされるものよりも、感情などの情動に従って引き起こされるものや、習慣として無意識に近い形で実行されるものが多くの割合を占めています。
また、ある状況下で特定の行動をとった結果が良かった場合、同じ状況下で半ば自動的にこの行動が再現されるということがあります。これは、進化の結果身についた学習能力で、こうした特性は「行動随伴性」と呼ばれ、人間だけでなく鳥類や哺乳類にも備わっているものです。こうしたことから、行動の制御は難しいのです。
なぜ集団の中で不正が生まれるか
プロフィール
愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、商工会議所にて経営指導員、第3セクターの設立運営など担当。2000年経営コンサルタントとして独立。2005年(株)ビジネスリンク設立、代表取締役。2009年~2018年中京大学大学院ビジネス・イノベーション研究科客員教授。「人」の観点から経営を見直し、「経営」視点から人事を考える経営人事コンサルティングに取り組んでいる。上場企業等の社外取締役も務める。日本行動分析学会会員