【専門家の知恵】部下のことをよく知っていますか?

公開日:2019年7月17日

<メンタルサポートろうむ 李 怜香/PSR会員>

 

 あなたは「部下のことをよく知っていますか」と尋ねられたら、どう答えるだろうか?「仕事の話しかしていなくて、個人的なことはよく知りません」という答えであれば、現状をちゃんと理解しているのだろう。「毎日会っているのだから、当然よく知っていますよ」という答えであれば、二通りある。それは、「部下と親しくて本当に人となりもよく知っている場合」と、「知っていると思い込んでいるだけの場合」である。では、思い込みではなく、部下の性格や人となりを自然に深く知るには、いったいどうしたらよいのだろうか?

 

◆その人に対する思い込みを持っていることに気づく

 「仕事の場では仕事のことだけ考えていればよい、相手の個人的なことは知らなくてよい」という考え方では、残念ながら、いいチームワークは作れない。

 部下の性格や考え方を知らなければ、相手に合わせた適切な指導をすることもできない。また、介護など家庭の事情が仕事に影響する場合、上司が部下のプライベートを何も知らなければ、部下のほうから言い出しにくいということもある。

 部下がプライベートなことをどのくらい上司に教えるか、上司に知られてもいいと思っているか、というのは、信頼のバロメーターであるとも言える。

 一番よいのは、部下本人と直接話して相手のことを知ることだが、それ以前に、その人の属性の持つイメージに引きずられていないか、まず点検する必要があるだろう。

 部下のことを知っていると思い込んでいる上司には、そういう「イメージ先行型」が多い。たとえば、次のような思い込みを持ってはいないだろうか?

・B型はマイペースだ
・九州出身の人は男尊女卑だ
・女性は機械が苦手だ

 血液型についてはまったく根拠はないし、他もそうしたイメージが流布している傾向が強い、といった程度の話だ。しかし、これをまるで事実のように受けとめている人がいる。このような型にはまった考え方を「ステレオタイプ」という。

 部下に対して、その人個人を見ずに、このようなステレオタイプで、人となりを判断していないだろうか。

 特にこれから職場には、外国人が増えてくることが考えられるが、国籍や民族に貼り付いたステレオタイプは、かなり強固なものだ。そのような思い込みに惑わされないよう気をつけよう。

 インド人全員が数学が得意なわけではないし、アフリカ系の人すべてが足が速いわけではない。この程度はまだ冗談ですませられるが、「中国人(韓国人)は反日意識が強い」というステレオタイプに至っては、最初から相手に敵意を持たれているという前提になってしまい、有害でしかない。

 

◆自然に自分のことを話してもらう工夫をする

 部下に自分のことを話してもらいたいと思っても、なかなかそのような機会がない、また、プライベートなことを根掘り葉掘り聞くと、相手の気を悪くするばかりか、場合によってはハラスメントだと思われかねない、こんな悩みをもつ上司も多いだろう。

 やはり、個人的に話を聞き出すというよりも、部下本人から、自分のことを語ってもらう仕組みが必要なのである。

 たとえば、部署の全体ミーティングを定例で行なっているのであれば、全員が回り持ちで自己紹介プレゼンをするのもよい。「私の好きな場所」「いまハマっているもの」などのテーマを決めると、話もしやすいだろう。

 また、そのようにあらたまった形ではなく、全体ミーティングの前に短時間でよいので、雑談タイムを設けるというやり方もある。まずは上司が自分から自己開示をして、誰もが気軽に話せるような雰囲気作りをするのがポイントだ。

 最近では、部署全体やグループではなく、上司と部下が1対1で定例ミーティングをする“1on1ミーティング”がトレンドになっている。その中では、プライベートについても、抵抗の少なさそうな話題から少しずつ聞いていくのが、信頼関係をつくる方法として推奨されている。

 たとえば、「この週末、何をしてたの?」という雑談に抵抗感を示す人はあまりいないだろう。そこから部下の趣味や日常の一端が分かれば、次には「先週も釣りにいったの?」など、自然に話をつなげることができる。そうして、好きなこと、苦手なこと、楽しいこと、苦痛なことなどを聞いていくと、その中からその人の価値観が表れてくる。

 このときも、一方的に部下に話してもらうのではなく、上司のほうからも、あえて少し言いにくい話を打ち明けると、部下も安心して秘密の話をしやすくなる。

 人間関係は、あくまでも双方向である。部下に話してもらいたい、部下のことを知りたい、という目的であっても、まず、上司自身のことを話そう、知ってもらおう、という回り道が、結果的に功を奏するのだ。

 

プロフィール

社会保険労務士、産業カウンセラー、セクハラ・パワハラ防止コンサルタント 李 怜香
メンタルサポートろうむ(http://yhlee.org)代表
岐阜県生まれ。早稲田大学卒業。職場のコミュニケーション、メンタルヘルス、ハラスメント防止について、ご相談、研修を承ります。15年以上の経験で、法律と心理、双方から中小企業をサポートしています。

 

 

 

「上司部下・マネジメント」関連記事

「労務環境の維持・改善」に関するおすすめコンテンツ

ピックアップセミナー

東京会場 2024/12/05(木) /13:30~17:30

【会場開催】はじめての給与計算と社会保険の基礎セミナー

講師 : ※各日程をご確認ください

受講者累計5,000人超!2009年から実施している実務解説シリーズの人気セミナーです!
給与計算と社会保険について基礎からの解説と演習を組み合わせることで、初めての方でもすぐに実務に活用できるスキルが習得できます。

DVD・教育ツール

価格
31,900円(税込)

経験豊富な講師陣が、初心者に分かりやすく説明する、2024年版の年末調整のしかた実践セミナーDVDです。
はじめての方も、ベテランの方も、当セミナーで年末調整のポイントを演習を交えながら学習して12月の年末調整の頃には、重要な戦力に!

価格
3,850円(税込)

かいけつ!人事労務では、法改正対応や従業員への周知、教育・啓蒙等に活用できる小冊子を販売しています。

通常は各種10冊1セットの販売となりますが、実際に手に取って中身を見て導入するかどうかを検討したいといったご要望に応え、小冊子を1冊ずつ、計6種類のセット商品をご用意しました。

おすすめコンテンツ

TEST

CLOSE